水出しで抽出した白茶と、お湯で淹れた白茶はまったく異なる香りになることをご存じでしょうか?本コラムでは、水出しを更に応用した白茶の楽しみ方を紹介したいと思います。
殺青工程の無い白茶には酵素が残存
白茶の特徴は、製茶工程において殺青が行われない点です。殺青は、茶葉に含まれる酵素を失活させるために熱を加える工程であり、タンパク質である酵素は、熱を加えることで活性を失います。
お茶には酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)が含まれており、これが茶のポリフェノールを酸化する役割を果たします。この酵素反応をお茶業界では「発酵」と呼びます。緑茶の製茶では、最初に殺青することで酵素を失活させ、これによって緑色と新鮮な香りが保たれます。同様に、烏龍茶や紅茶も、希望するレベルの酵素発酵(酸化)が達成された段階で殺青が行われ、特定の風味を固定します。
それに対して、白茶の製茶工程の場合、最初から最後まで殺青工程を伴いません。低めの温度で、萎凋(徐々に萎れさせて水分を蒸発する工程)をすると、脱水ストレスにより酸化酵素がゆっくりと活性化し、白茶独特の花のような香りを生み出します。萎凋は茶葉が乾燥し、最終的に水分を10%以下になるまで行い、低水分で酵素が活性化できない状態に仕上げます。
水出しとお湯出しでは異なる白茶の香り
白茶には酵素が失活せずに残存しているため、白茶をお湯で淹れると、茶葉に含まれる酵素が熱と水分で活性化し、茶葉の酵素酸化が起こります。
お茶を淹れるときは熱湯を注ぐため、酵素は瞬時に失活すると思われがちですが、実際にはお茶の茎の中心温度は、ゆっくりと上昇します。このため、白茶を1煎目2煎目と淹れると、茶葉の色は徐々に黄緑→ベージュへと変化します。
この変化に伴い、香りも1煎目のトップノートを伴う華やかな香りから、徐々に落ち着いたフルーツ系の香りへと変化していきます。淹れる過程で香りが徐々に変化するのは白茶の特徴です。
逆に、この白茶の特徴を生かした淹れ方が、水出しです。水出しの際には、水の温度が低いため、白茶に含まれる酵素はほとんど活性化しません。特に冷蔵庫で冷やした冷たい水を使用すると、酵素が活性化しにくく、白茶の新鮮な香りを引き出すことができます。
水出しで淹れた白茶は、長時間茶葉を浸漬しても茶殻は鮮やかな緑色を維持しており、また、お湯で淹れた白茶とはだいぶ異なる香りがします。水出しの白茶は、シソの葉のような爽やかで甘い香り、柑橘系の香り、花のような甘い香りが見事に融合し、トップノートを伴う鮮烈な香りが特徴です。水出しの白茶は、その非常にフレッシュな香りゆえに、お茶と言うよりお茶ジュースと表現した方が良いかもしれません。
一晩漬け込んだあとの茶殻:鮮やかな緑色をしております。この茶殻、直ぐ捨てるのは勿体ないので、私は更に継続してお湯で何煎か楽しみます。
水出しの香りを温かいお茶で楽しむ方法
先述の通り、水出しで淹れた白茶は独特の香りを楽しむことができますが、実はこの水出しならではの香りを熱湯でも楽しむ方法があります。
手順としては、濃い水出しにした白茶を、沸騰したお湯で希釈します。白茶の濃縮液10〜20%に対して、熱湯を約80〜90%加えることで、まるで新しく淹れたてのお茶のように熱々に仕上げることができます。この手法を利用することで、水出しで抽出した特有の香りはそのまま残しつつ、熱々の温かいお茶を楽しむことが可能です。
この程度の水出し原液を湯で薄めるとちょうど良い濃度になります。
この方法のポイントは、水出しにする際は少なめの水で行います。例えば、5gを100ml〜200mlほどの水で抽出します。
浸漬時間は数時間以上が理想です。私は夜寝る前に準備して朝まで一晩浸漬するようにしております。
重要なポイントは、なるべく冷たい水で出すことです。水温が上昇すると茶葉に含まれる酵素が活性化するためです。
また、水出しを作るときの水は湯冷ましを使用すると、生水よりも遙かに香りが強く出ます。
尚、光が当たる場所で抽出すると、光によって成分の劣化が起こるため、避けてください。
濃く出した水出し白茶の各種応用
白茶を濃く抽出し、その液を保存すれば、色んな楽しみ方へと応用が可能です。
夏場など、普通に冷たくして飲みたい場合は、水で割りましょう。
また、白茶は炭酸との相性が良いお茶なので、原液を炭酸で割るのも面白い選択です。
他にも、焼酎で割るなどの応用もおすすめです。
白茶の水出し濃縮だけ冷やして、会社に持参し、少量ずつお湯で割れば、職場でも淹れたてのような白茶が楽しめます。
水出しを作るのには多少時間がかかりますが、冷蔵庫に保存すれば、数日は日持ちします。
当店には多数の白茶がありますが、水出しで特に特徴が際立つお茶としては、古樹白茶・古樹白牡丹・大雪山野生白茶などがお勧めです。
https://hojotea.com/categ/white.htm
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