雲南省臨滄市の南西部の鎮康県にある薄刀山という山で作られたプーアル熟茶を仕入れました。薄刀山はミャンマー国境に非常に近い地域に位置します。
鋸の歯のような険しい岩山
薄刀山は鎮康県に住む人なら誰もが知っている有名な山で、非常に切り立った岩山のような外観をしております。私の個人的な感想としては、薄刀山の外観は日本の南アルプスの鋸岳(のこりぎだけ)にそっくりだと思いました。いずれにせよ、切り立った外観が刃物のように見える点が共通する特徴です。私は、初めて薄刀山を見たとき、まさかこの山でお茶が作られているとは思いませんでした。ただ実際には、茶園は広く分布しており、中には無肥料の自然栽培(野放茶園)も多く見られます。今回仕入れたお茶は、無肥料無農薬の野放茶園産の原料を使用しております。
高品質のプーアル生茶のような濃厚な後味
薄刀山プーアル熟茶は2016年産の毛茶を仕入れ、357gの餅茶に緊圧加工しました。雲南省では一般的に良い茶葉は生茶へと加工し、熟茶に回るのは品質が低めの原料です。良い茶葉原料は収穫量も少なく、発酵にある程度の量を必要とする熟茶の生産には向かないというのも理由の1つです。ただ、HOJOでは高品質の生茶に匹敵する熟茶を複数ラインアップしたいという目標を掲げ、昨年より新たな生産者の探索や既存の生産者に特注依頼をするなどの試みを進めてきました。今回仕入れた薄刀山を飲んで頂くと分かりますが、このお茶は、プーアル生茶のレベルの深い余韻と、やわらかい飲み味が特徴の素晴らしいお茶です。堆積発酵中に頻繁に攪拌を行うことで、好気性菌による発酵を促進し、その結果、甘い、乾燥棗のような香りに仕上げることに成功しました。近年多くの熟茶で見られるような土臭さやかび臭さは全く感じられず、癖のない甘い香りゆえに、一般にプーアル熟茶を苦手とする人、子供でも楽しめるお茶です。極めて高い品質のお茶ですが、雲南省とミャンマーの国境地帯という極めて僻地で作られたお茶ゆえに、比較的手頃な値段で仕入れることが出来ました。非常にお勧めの熟茶です。