マレーシアで長期熟成した2種類のお茶を発売しました。常夏のマレーシアでは熟成が早く進むことから、ビンテージ茶特有の乾燥フルーツや黒糖のような甘い香りがしっかりと感じられ、非常にお勧めのお茶です。
熟成は温度が高い程早く進む
お茶の熟成は温度が高い程早く進みます。ワインの熟成も同じなのですが、ワインの場合、温度が高いと酢酸菌や乳酸菌の増殖が起こる可能性があるため微生物が増殖しにくいギリギリの温度で保管されます。
水分量が低いお茶の場合、微生物汚染は心配いらないため、純粋に温度が高い方が、熟成にはむいております。逆に新茶の香りをそのまま温存したい場合、出来るだけ低い温度で保存します。
マレーシアのHOJOの倉庫は年間を通じて26-27℃に保たれており、四季がある日本と比べると2〜3倍の速度でお茶が熟成するように感じます。
今回発売の2種はマレーシアで5年以上保管されたお茶ゆえ、日本で10年以上熟成させたお茶に匹敵する変化を楽しむことが出来るのではないかと思います。
無酸素で熟成する事で理想的に熟成
プーアル茶の熟成方法には様々な方法がありまが、HOJOでは無酸素での熟成が最も理想的と考えております。
この方法は一見新しい方法と思われがちですが、従来の方法で保存したプーアル茶を観察すると、無酸素熟成が理想であるというヒントを得ることが出来ます。
例えば:
1.空気に触れる環境下で長期間熟成させた餅茶において、鉄餅と呼ばれる、石の様に硬くカチンコチンに圧縮されたプーアル茶は理想的に熟成し、雑味が少なく甘い香りを呈する。
2.空気に触れる環境下で長期間熟成させた餅茶の場合、大きなサイズの餅茶の方が良い香りへと熟成すると言われている。
3.空気に触れる環境下で長期間熟成させた餅茶を注意深く観察すると、餅茶の表面よりも内部の方が香りが良いと言われている。
硬く圧縮したプーアル茶は内部が真空状態になっております。また、大きなサイズの餅茶、餅茶の内部の方が理想的に熟成すると言う点からもお茶の熟成の際には酸素に触れない方が良いことが示唆されます。
HOJOでプーアル茶は無酸素で包装しているのは、鮮度を保持するだけでなく、理想的に熟成を進めるためです。
理想的な経年熟成とは無酸素下での酸化反応
無酸素で熟成させたプーアル茶と空気に触れる状態で熟成させたプーアル茶を比較した場合、空気に触れる環境下で熟成させたお茶は変化の速度が早く、どんどん香りが変化します。ただし、ヒネ臭や枯葉臭、土臭のような好ましくない香りも強く出ます。
それに対して無酸素熟成のお茶は変化はゆったりとしておりますが、フルーツや乾燥フルーツのような甘い香りを形成し、雑味やヒネ臭は一切ありません。
「無酸素なのにどうやって酸化するんだろう?」と疑問に思われるかもしれませんが、実は、お茶の成分は酸素が無くても酸化還元されます。酸化には以下の3つの定義があります。
1. 酸素を得る
2. 水素を失う
3. 電子を失う
1が最も一般的な酸化のイメージですが、実は2や3のように酸素が無くてもお茶は酸化します。正にこれがお茶の熟成の原理であり、無酸素で酸化すると甘い香りだけを引き出すことが出来ます。
緬境野生茶 2014年
雲南省とミャンマーの国境付近の山で収穫された野生のお茶です。
カメリアタリエンシスではなく、どちらかというと紫茶に近い種類のお茶です。
このお茶は非常にふくよかで、口に含んだときに香りや味が大きく広がります。
しっかりと熟成しているため、乾燥フルーツや黒糖のような甘い香りが感じられ、また、ビンテージ茶独特の滑らかな口当たりも呈します。
馬鞍山功夫普洱茶 2015年
このお茶は鳳凰単叢烏龍茶の作り方を取り入れ、酵素発酵をさせた後にプーアル生茶の作り方で仕上げております。
もともと烏龍茶のように仄かなフルーツの香りがするお茶でしたが、5年間の熟成を経たことで、衝撃的な個性のお茶へと変化を遂げました。
マレーシアから到着したサンプルを飲んだとき、正直、驚きました。私の経験上、半発酵のお茶は熟成速度が速いですが、長期の熟成によって気持ちがよいほどに濃厚な香りへと変化しました。ドライマンゴや黒糖のような甘い香りを呈し、黙って出されたら紅茶かと思うのではないでしょうか。非常に面白いお茶です。