中国福建省武夷山の桐木関で作られた、桐木 水仙紅茶を発売しました。
茶園は標高1000m、お茶の樹齢は50歳ほどのお茶の木から摘まれた、無農薬無肥料の自然栽培茶を原料としております。
伸びやかな後味と濃く甘い香りが特徴の珍しい紅茶です。
薫香がするタイプだけじゃ無い伝統的な正山小種
このお茶は水仙種を原料に用いて、伝統的な正山小種の製法を踏襲して作られた紅茶です。
本当は正山小種水仙紅茶とでも呼びたいところなのですが、正山小種の場合、産地である桐木関にある実生のお茶を使うのが標準とされており、それが小種という名称の由来です。従って、水仙種を原料に使っている本商品の場合、桐木水仙紅茶という名称で呼ばれます。
現在、武夷山桐木村には2種類の正山小種が存在します。
1.一般によく知られている、薫香(煙の香り)がするお茶。
2.奇種、小赤甘などのお茶に代表される、濃い桃やトロピカルフルーツの香りがし、全く煙の香りがしないタイプの正山小種です。
一般に、伝統的な正山小種は煙の香り(薫香)がし、フルーツの香りがするタイプは近年開発されたお茶と思われがちですが、一概にそうともいえません。
正山小種はアールグレイの元となったお茶としても知られております。1800年代当時の正山小種を飲んだイギリス人が、トロピカルフルーツのような香りに感動し、その香りを模倣しようと、紅茶にベルガモットの香料を添加したのがアールグレイの起源と言われております。薫香のする紅茶がモデルだった場合、アールグレイはもっと煙り臭いお茶になっていたのでは無いでしょうか?
また、同じく1800年代、正山小種の高需要に伴う価格上昇のため、正山小種の作り方を模倣して作られた紅茶がキームン紅茶でした。もし、当時、薫香のする正山小種を模倣していたとしたら、キームン紅茶も薫香がするはずですが、実際は煙の香りはしません。
これらの歴史的なストーリーは100%正確では無いかもしれませんが、1600年代から、煙の香りがしない、フルーツ香のする正山小種があったと想像する事が出来ます。
非常に稀少な水仙種の紅茶
水仙種と言えば、武夷烏龍茶(岩茶)で非常に有名な品種です。
水仙種の人気が高いのは、味が良いことがその理由です。味が良いとは、つまり、後味が濃く、長い余韻を呈します。
ただし、水仙種のお茶の香りは概して華やかな方では無いため、加工において香りを引き出すための工夫が必要になります。
現在、武夷山桐木関において、水仙種の割合は全体の1%以下と栽培量が少なく、非常に稀少なお茶です。
桐木関における水仙種の歴史ですが、1970年以前までは水仙種は多くの農家で栽培しておりました。しかしながら、1970年代に多くの水仙種が撤去されました。
その理由は、2つあり、1つ目は、当時福建省大手の生産者が水仙種のお茶は発酵させても香りが弱いとコメントしたことが影響しております。
2目の理由は、1970年代までは、桐木関のお茶は中国国内では無名だったため、お茶の価格が安く、お茶農家は十分な収入が得られておりませんでした。この為、多くの農家がお茶を撤去し、代わりに大毛竹という箸の原料となる竹へと植え替えをしました。
炭火で長時間炙ることで形成される特徴的なフルーツ香
水仙種は茶葉が大きいため、一般的な正山小種よりも薄めの層にて、萎凋が行われ、発酵を強めに行うことで作られます。
正山小種/桐木水仙紅茶の製法
原料茶葉 → 萎凋 → 揉捻 → 発酵 → 発酵止め → 乾燥 → 炭焙
正山小種の場合、一般的な紅茶の生産工程に加え、炭火による炭焙工程があります。これは何かというと、紅茶を炭火にて100℃前後で6時間くらいかけて焼き上げる事でお茶の熟成を加速させ、乾燥フルーツのような甘い濃厚な香りを引き出します。炭焙を行う際、温度が高いと茶葉が焦げてしまうため、常に温度管理をする必要があり、非常に手間のかかる作業です。尚、熱風で焙煎をする生産者もおりますが、炭火で焙煎したお茶と熱風で焙煎したお茶では、味の透明度が全く異なります。炭火は熱の透過性が強く、お茶の芯まで熱が通るのに対し、熱風は熱の浸透性が良くないために、表面ばかりが加熱され、茶葉内部まで均質に熱をかけることが出来ないためです。
香りはサツマイモと桃の香り、仄かにマンゴのような香りします。乾燥竜顔のような香りもし、全体にとても甘い香りがするお茶です。