2022年における、中国のお茶の生育状況、価格相場について現在分かっている状況をシェアしたいと思います。
2022年のお茶の生育状況について
今年はお茶の収穫シーズン前の2月-3月に十分な雨量があったため、お茶の生育が良く、また、例年と比べると1週間から10日ほど生育が早い状況です。
面白い事に、雲南省のお茶の生育具合と品質をみることで、その他全ての地域(中国、台湾、日本)のお茶の状況が分かります。
雲南省では、中国で一番最初にお茶の収穫が始まりますが、雲南省における生育状況や品質の傾向は、他のお茶産地にそのまま反映されるため、他地域のお茶の状況を把握する上での先行指標になります。
例えば、今年は雲南省のお茶の収穫が1週間〜2週間早かったわけですが、日本茶に関しても、各種烏龍茶についても、例年よりも収穫時期が1-2週間ほど早く始まってます。
また、今年の雲南省のお茶はシーズン前の十分な雨量の御陰で豊作でしたが、同じ事が他地域でも想定出来ます。
昨年は干ばつと言えるほど雨が少ない年で、雲南省のお茶は、極端に収量が少なく、また、お茶の香りが青っぽい点が特徴でした。昨年は、日本茶でも、台湾茶でも、鳳凰単叢についても、同様の傾向が観察されました。
雲南省のお茶は中国経済に逆行して値段が上昇
各種メディアを通じて周知の事実かと思いますが、中国ではゼロコロナ政策が強行されており、感染者が発生している都市は相次いでロックダウンされています。
ロックダウンは中国経済への影響は勿論、流通に関して、コスト面、時間面で多大な影響を生じており、お茶産業についても例外ではありません。
中国の経済状況はというと、不動産大手の恒大集団の破綻、ゼロコロナ政策に端を発した各種都市のロックダウンにより、生産活動や消費が落ち込み、先日発表された中国のGDPに関しても成長率が鈍化しております。
このような状況下、普通に考えたらお茶の値段は下がるはずなのですが、雲南省のお茶に関しては、むしろ全体に上昇しております。
その主な理由は、昨年2021年は、春に雨が極端に少なく、お茶の収穫量が例年の半分以下でした。この為、多くのお茶会社が十分な在庫を持っておらず、その反動で、今年はお茶が多く買われております。当然需要が増えれば、値段は上がります。
今年は、お茶シーズン前に雨量が多かったことで、お茶の収穫量が非常に多く、業者の多くは去年のリベンジと言わんばかりに沢山の在庫を積み上げております。
反面、都市部におけるお茶需要は減少傾向にあるわけで、今年中国の業者が仕入れすぎたお茶はおそらく一年で売り切ることはできないでしょう。その様な事情から、来年以降、値段は徐々に下がると予想しております。
もう一点、雲南省のお茶の値段を押し上げている原因は、隣国から流入するコロナ感染です。
雲南省は中国の最南西部に位置しており、ミャンマー、ラオス、ベトナムと国境を接しております。
特にミャンマーと国境を接するお茶産地の鎮康県などでは、過去2年に渡り、隣国からの感染流入が頻繁に起こっております。非常に田舎ゆえに、ニュースにこそなっておりませんが、隣国からの感染は慢性的に発生しております。このような状況ゆえに、生産者や農民達の移動細かく制限され、原料となる生茶葉を周辺の茶園から買いつけることが難しく、その結果、お茶によっては、入手が困難となったり、原料コストが上昇しております。
鳳凰単叢烏龍茶と武夷岩茶の販売価格上昇
潮州の鳳凰単叢烏龍の場合、お茶摘みは外部からの出稼ぎ労働者が期間工として雇われるのが一般的です。出稼ぎ労働者と言っても、長年にわたり、毎年お茶摘みを生業としている人々なので、熟練のお茶摘みのプロです。鳳凰鎮では、毎年、地域全体では1万人以上の女性部隊が雇われ、彼らの殆どが、福建省の泉州といいう地域から数週間の期間契約でやってきます。
ところが、泉州ではコロナ感染者が出たことで、ロックダウンが行われ、泉州からの人の出入りには14日間の隔離措置が行われます。この場合、往復で28日の隔離が行われるため、雇い主はその間の日当、宿泊費、食事代を支払う必要があり、採算が合いません。この為、今年は他地域からお茶摘み労働者を雇う必要があり、それによるコスト上昇は避けられません。尚、武夷岩茶についても同じ状況から価格上昇が懸念されます。
円安による仕入れ価格の上昇
中国茶の仕入は中国元か米ドルで取引されるのが一般的です。HOJOでは直接生産者と取引しているため、基本、中国元です。
このため、日本円と中国元(USD)の為替レートが変化すると、円での価格が上昇します。
現在急激な円安が進んでいることから、同じ値段のお茶を仕入れるために、より多くの日本円を支払う必要があり、お茶の仕入価格が上昇しております。
例えば、2021年の春は1元が16.5円位でした。それに対して、現在は1元が約20円になっております。( USDは昨年の春は1ドル105円だったのが、今は130円です。)
昨年は100元のお茶に対して、1650円支払えば良かったわけですが、今年は2000円支払う必要があり、中国元での値段は同じでも、円での値段は約2割上昇しております。
今年は海外のお茶を仕入れするのが非常に多難な年ですが、かと言って来年以降改善する可能性も低いと想定されますゆえ、今後はこの状況に適応していかねばなりません。
コストの面はともかく、早く、昔のように自由に中国に仕入れに行ける時代が来ることを願う次第です。
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