中国では、挨拶代わりに「你吃饭了吗?」、つまり、「ご飯食べた?」と言うのが一般的ですが、雲南省にいると、色んな局面で、「吃饭」「吃饭」、ご飯食べていきなさいと言われます。ただ、長く雲南省に携わると、これらのご飯への誘いは本当に誘っている場合と、京都における「お茶でもどうぞ」と同じで、逆の意味を持つ場合があることがあると分かります。
雲南省ではお茶を選ぶのでは無く、自分たちで生産
鳳凰単叢や台湾の烏龍茶の場合、私たちは産地を訪れ、生産者が作ったお茶を選定します。品質向上に不可欠なのは、選定プロセスで問題点を共有し、それに起因する製造上の課題を生産者と話し合うことです。
しかし、雲南省のお茶については、仕入れ方法が全く異なります。単に出来上がったお茶を仕入れるのではなく、私たちは生産者の設備や工場、人員を活用し、生産管理はもちろん、実際に自らお茶を生産しています。ある意味、アウトソーシングのような形態を取りながら、自らが生産者として活動しています。そのため、夜中の2時や3時まで工場に滞在することも珍しくありません。滞在中は、生産者の提供で夕食を毎回ご馳走になっております。
現在も私達は雲南省に滞在しており、日々の様子は以下のインスタやFacebookで紹介しております。
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雲南省では肉が一番高価な食材
雲南省では、野菜が非常に安価であり、一方で肉類は高価であるという現状があります。少数民族のマーケットなどに行くと、野菜は種類に関係なく、一束1元(20円以上)程度が相場です。
そのため、ゲストをもてなす際には肉料理が用意されることが一般的です。また、それら肉料理の味付けは、各種香辛料に加え、発酵食品やハムが用いられます。
山間部では、ほとんどの農家がハムや発酵豆腐など、さまざまな発酵食品を製造しています。これらの貯蔵食品は彼らの料理に欠かせず、特にハムは日本料理における煮干しや昆布、鰹節のように出汁を取る上で欠かせない食材として重要視されています。
夕食を戴くべき状況とお断りすべき状況
野生茶の探索や遠隔地の茶園を訪れる際には、現地の農家の方々が料理を振る舞ってくれます。私は、夕食まで御馳走になってしまうのは非常に申し訳ないと思い、一緒に行った友人に帰ろうと促すのですが、彼らは食べる気満々で、帰ることを拒みます。結局、毎回昼食や夕食を御馳走になるのが常です。
山村での野生茶探索の際にいただいた食事は、余韻が強烈に長く、シンプルながらも香辛料やハーブの複雑な香り、そして発酵食品による味わいが素晴らしい料理でした。
一方で、生産工場などで皆で食事をしていると、色んな人が代わる代わる工場に用事があって立ち寄ることがあります。雲南省では、やってきた人には、立場に関係なく、必ず、「吃饭!」と声をかけます。つまり、「一緒にご飯を食べましょう!」という意味です。しかし、工場に来た人が実際にご飯を食べるのを見たことがありません。彼らは基本的に何らかの理由で断り、ご飯を食べません。近所の人に「ご飯食べてってよ」というのは、雲南省では「こんにちは」と言う意味なのです。
外の世界との繫がりを非常に重要視する地域性
私は既に雲南省に10年以上来てますが、最初の内は、このご飯を戴くべきか、お断りするべきかの空気感が中々読めませんでした。ただ、最近分かったのは、遠路、仕事の話で遙々訪れたお客には、ご飯を振る舞うし、お客もそれを戴くのがある種のマナーなんだという事です。
雲南省で仕事をしていて思う点は、彼らはお茶、クルミ、山菜、キノコ、蜂蜜、ハム、その他発酵食品など、我々から見たら非常に貴重な食材を生産したり、採取したりしておりますが、村が山奥の僻地に位置していることで、外との繫がりが非常に限られております。このため、他省はもちろん、自分たちの村外から来た人と知り合うことは、外との販路を確保する稀少なチャンスなのです。このため、彼らは些細な出会いでも、外の人との出会いを非常に大切にします。外から遙々来た人をもてなすのも、そういう地域性ゆえなんだと思います。
彼らのもてなしに仕事を通じて応えてあげるのがベストなのですが、そうも行かないことも多々あります。そのため、私たちが山村を訪問する際には、フルーツやお菓子など、村では稀少と思われるお土産を沢山持参するように心がけています。
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