臨滄西部におけるプーアル茶の生産業者の1人、劉氏が所有する半野生化した自然栽培茶園産のお茶、劉家古樹生茶の仕入を今年も行いました。本日、劉家古樹生茶を発売しました。
野生にしか見えない劉氏の茶園
少数民族の村に加工場を構えている劉氏の場合、村内にある全ての茶園の状況を把握しております。彼は特定の農家が所有する自然栽培茶園産の生茶葉を仕入れては、加工し、自社製品として販売、顧客の要望に基づく特注生産の2つを本業としております。ただ、それとは別に、劉氏は村から離れた山奥に自家用の茶園を所有しております。所有してはいるものの、自らが自然栽培が好きな点と、多忙がゆえに、茶園は完全に放置された状態になっており、彼の茶園は「茶園」と言うよりも、「元茶園」と呼ぶ方が適切なほどお茶の木は野生化し、周りの生態系と一体化しております。茶園が限りなくワイルドな状態であり、常に窒素分が枯渇しているため、お茶の葉の成長が極めて遅く、一本当たりのお茶の木から収穫できる茶葉の量は、一般的な常識からは想像できないほど僅かです。ただし、厳しい環境で育ったお茶の葉は、山菜のように甘く、体に染み入るような自然な味わいを楽しむことが出来ます。
品質は良い物の量が確保できず
私は茶摘みが始まる前に劉氏のもとを訪れ、劉氏の茶園のお茶を全量買い上げる約束をしました。茶摘み直前に茶園に行ったときには、草が刈り取られ、お茶摘みの準備が出来ておりました。自然栽培とは言え、有害な虫や蛇などがいると危険ゆえに、収穫前だけは下草を刈るのが一般的です。
今年は多めに仕入れる予定だったのですが、天気などの関係で結果的に仕入を行うことが出来たのは予定の半分の量でした。仕入れられた量は少量ではありますが、殺青が丁寧に行われており、また、乾燥時の天候も良かったために、品質関しては満足な内容に仕上がりました。
短期間の熟成でも早く変化するお茶
劉家古樹生茶の茶園は標高が2100-2200mに立地しており、更に、野生の植物と同じような環境で生育していることから、他のお茶にない特徴的な味わいを示します。飲み味は非常に透明感があり、クリアーな飲み心地です。余韻は非常に深く、中程度のボディが感じられます。ただ、このお茶の面白い点は、熟成速度が非常に速く、数年程度の熟成によりフルーツの香りへと変化します。これには2つの理由が考えられ、1つは野生的な生育環境ゆえに生育速度が遅く、一般的なお茶よりも遙かに高濃度のポリフェノール(カテキン)を含んでおります。ポリフェノールが多いお茶は熟成することでより、より強いフルーツの香りを形成します。
東方美人のように沢山のウンカに噛まれたお茶
もう一つの理由は、劉家古樹生茶の茶葉は激しくウンカに噛まれており、熟成工程を経ることで東方美人と同じく、蜜香マスカテルフレーバー)系の香りが形成されます。通常、ウンカに大量に噛まれた茶葉の場合、製茶直後には仄かな青臭ささが感じられ、また、舌に僅かな渋味が感じられます。ただ、これらは熟成に伴い消失し、甘いマスカット系の香りへと変化します。マレーシアにて昨年産の劉家古樹生茶を1年保管したところ、今年の時点でとても甘いフルーツ香が形成されておりました。熟成速度が速いことも手伝ってかクアラルンプールの店舗では劉家古樹生茶は非常に人気です。