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前川淳蔵作の伊賀天然朱泥急須が入荷

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前川淳蔵氏作の伊賀天然朱泥の宝瓶を発売しました。

稀少な天然土を使用

伊賀天然朱泥はお茶の味を良くすると言う観点から、伊賀、月ヶ瀬、信楽エリアの様々な土をスクリーニングして選んだ土です。非常に稀少な土だったゆえ、自社にて全量買い取り、急須作家に供給する形で商品の製作を依頼しております。天然土という点に加え、もともと古琵琶湖層に堆積した土と言うこともあり、砂質を多く含む性状ゆえ、粘りが無く、また耐火度が低いため、陶芸を行う上で非常に扱い難い土です。前川氏は幾度となく試行錯誤を繰り返し、製作方法・技術を最適化して貰いました。難しい土にかかわらず、非常によい品質に仕上がっていると思います。

香りの広がりも後味も強く感じられる土

伊賀の土は味の特徴としては秋津無名異と非常に似ております。フルボディで香りの広がりがあり、同時に余韻(コク・後味)についてもしっかりとしており、非常にバランスの良い土です。香りの広がりが豊という点から、紅茶や烏龍茶、プーアル茶との相性がよく、ガラスの茶器で淹れた場合と比較すると、香りがより華やかに感じられます。もちろん、発酵茶以外のお茶とも相性がよく、緑茶を淹れると、雁が音のような華やかさを楽しむことが出来ます。この土は鉄観音や鳳凰単叢烏龍茶とも相性は良いのですが、もともと香りが強いお茶を伊賀天然朱泥で淹れた場合、香りが強くなりすぎるため、その辺は好みが分かれるところではないかと思います。

宝瓶は初心者にもとても扱いやすい道具

宝瓶は蓋碗の代用の茶器としてとても機能的で、初心者にも使い易い道具です。
特に平型の宝瓶は、クリーニングが容易で、プーアル茶を初めとする様々な形状の茶葉の出し入れも容易であるため、私自身非常に重宝しております。


初めての人にお勧めHOJOのプーアル茶の選び方

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私は毎年雲南省に一ヶ月滞在しては、原料の選定からプーアル茶の生産に携わっております。ただ、一ヶ月もいると、様々な魅力的なお茶との出会いがあります。結果、HOJOのプーアル茶のラインアップは非常に多種類になっております。沢山の商品があることは、選ぶ楽しみがある反面、慣れないお客さんにとっては選ぶのが難しい状況かと思います。そこで、この銘柄を選んでおけば間違いないというお茶を紹介したいと思います。

プーアル生茶とプーアル熟茶の違い

まず、プーアル茶には2つの種類、プーアル生茶とプーアル熟茶があることを知っていただく必要があります。
プーアル茶の産地である雲南省でプーアル茶と言ったら普通はプーアル生茶を指すのに対し、日本でプーアル茶と言ったら、茶色の色をしたプーアル熟茶が一般的かと思います。


どちらもプーアル茶という名称が付いておりますが、実際には全く異なるお茶です。紅茶と緑茶位の違いがあると言っても過言ではありません。たまたま、プーアル茶という名称を共有しているものの、製法も味も香りも色も全く異なります。


プーアル生茶の新茶は緑茶そのもの


緑茶に非常に近いプーアル生茶に対して、プーアル熟茶はプーアル生茶を原料に微生物発酵で作られた発酵茶です。生茶にすべきか熟茶にすべきか悩まれたら、まずは熟茶から初め、ある程度慣れたところで、生茶に移行されるのがお勧めです。尚、緑茶や白茶が好きな人は、最初から熟茶ではなく生茶の方があっているかもしれません。

プーアル茶は香りよりもむしろ味を楽しむお茶

プーアル茶は烏龍茶や紅茶の様に非常に強烈な個性を伴うお茶ではありません。プーアル茶の楽しみ方は、その味わいです。質の良いプーアル茶は、生茶熟茶に関係無く、非常に余韻が長く、濃い後味と、奥行きのある深い味わいがあります。更に、野生に近いお茶になると、味わいに透明感が増し、飲んだときに体に染み入るような感覚が楽しめます。

プーアル茶は保存することで甘い香りが形成される

但し、プーアル茶は経年保存によって熟成が進むと甘い香りがするようになります。熟成速度はお茶の水分、外気温、保存期間に比例します。プーアル茶の熟成はワインの熟成と比較されることが多いですが、ワインと同じく、酸素に長期間晒されれると、藁や枯れ草のようなひねた香りで上書きされるため、HOJOでは無酸素での熟成を推奨しております。

一番最初にお勧めするプーアル茶

まず、初めての人に一番最初に試していただきたいお茶としては、以下のお茶になります。値段と品質のバランスが良く、また、程良く熟成も進んでいるため飲みやすいお茶です。どちらも自然栽培の原料から作られており、余韻が程良く長く、とても飲みやすいお茶です。

 

熟茶は无量山古樹沱茶 2013
チョコレートとも相性が良いお茶です。ミルクティにして飲むと意外に美味しいお茶でもあります。

 

生茶は東山生茶 2014
東山生茶は様々な生産年のお茶がありますが、熟成が進んだ2014年産が飲みやすくてお薦めです。

野生のお茶から作られたプーアル茶

最初に試していただきたいプーアル茶として、もう一つ野生のお茶を紹介します。

HOJOで扱っている野生のお茶はカメリアタリエンシスという種類のお茶です。人里離れた山奥に自生する野生の木から摘まれたお茶です。野生というと、苦い、渋いというイメージがあるかもしれませんが、実はその逆です。野生茶は山菜と同じで、非常に味わい深く、甘味があり、また、フルーツやハーブのようなとても爽やかな香りのするお茶です。本来、野生茶は非常に稀少なお茶であり、値段もそれなりにするお茶ゆえに、初心者と言うよりはハイアマチュア向けのお茶とも言えます。ただ、野生茶は香りに個性があるお茶ゆえに、初心者にも分かりやすく、プーアル茶を好きになるきっかけになりやすいお茶でもあります。まず試していただきたい野生のお茶は以下のお茶になります。

大雪山野生茶 2017

余韻の変化を比較理解するのにお勧めのプーアル生茶

樹齢が高くなり、余韻の長さを体感できるお茶の組み合わせを紹介します。後味の濃さ、余韻の長さは原料の質を表す重要な品質要素です。3種類紹介しますが、どれも同じような製法で作られたお茶で、どのお茶も非常に上手に作られておりお勧めのお茶です。何れも全く農薬も肥料も使わない自然栽培茶から作られております。東山→白鶯山→无量山(むりょうさん)の順番に余韻が長くなります。ただ、東山は値段と品質のバランスが良く、普段飲みをするのにとてもお勧めのお茶です。

1.東山生茶 2015

2. 白鶯山古樹生茶 2015

3. 无量山古樹生茶 2015

プーアル熟茶で余韻の違いを体験する

これら3つのお茶は1→3になるにしたがって余韻が強くなります。3つとも私が非常にお勧めするプーアル熟茶です。

1.高山古樹熟茶


2.薄刀山古樹熟茶


3.果敢古樹熟茶

果敢古樹熟茶は極めて余韻が長く、非常に濃厚です。お客さんによっては、濃厚すぎてお茶酔いしてしまう人もいます。

ボディという概念を体感する

ボディとは味の広がりを指す言葉です。世の中でよく使われる言葉の割にこの言葉の意味を正確に理解している人は非常に少ないのが実情です。中国や台湾ではボディのことを「口感」という言葉で表し、有名産地のお茶の多くは強いボディが感じられます。ボディの強いお茶は一般受けし易い傾向があるためです。以下の2つの組み合わせのお茶を飲み比べると、ボディとは何か実体験して戴く事が出来ます。ボディを比較しやすくするために、コクの強さが同じくらいの、同じ生産年お茶をご紹介します。1番はボディが軽く、2番はフルボディです。コクと異なり、ボディは強ければよいと言うわけではありませんが、ボディの強いお茶は有名になり、高値で売られる傾向があります。但し、お茶を沢山飲む人は徐々にボディが軽めのお茶へと好みがシフトする傾向があります。

1.岩鳴山古樹生茶 2014


2.高山紫茶 2014

以下は、より、高いレベルの品質にてボディの違いを比較をするのにお勧めの組み合わせです。老黒塞古樹生茶はライトボディのお茶ですが、余韻が非常に長く、お茶を頻繁に飲む人に愛されるお茶です。逆に、馬鞍山古樹生茶は超有名産地である老班章のような強烈なボディと濃い後味のお茶です。馬鞍山は中国における超高級プーアル茶の特徴的な味がするお茶です。

1. 老黒塞古樹生茶 2016


2. 馬鞍山古樹生茶 2016

熟成による香りの変化を体験する

日本の気候はやや涼しいため熟成の進んだお茶がやや少なめですが、以下のお茶がお勧めです。

東山生茶 2017
新茶の味香りを体験していただくのにお勧め。2017年は一番茶の時期に雨が少なかったこともあり2017年産の東山は素晴らしい品質です。

東山生茶 2014
仄かに熟成が進み、甘い香りがします。

独木春古樹生茶 2012
熟成が大分進み仄かなフルーツ香がします。長期間保存したお茶ですので、開封後は1週間ほど外気に触れさせ、水分をすわせた方が、より香りが強くなり、味も軟らかくなります。

プーアル茶好きの到達点の1つ「野放茶」

近年HOJOで力をいれているのは、自然栽培茶のなかでも「野放茶」と呼ばれるカテゴリーです。もともと人によって植えられたお茶ですが、その後全く手をかけられず、野生化した茶園の事を指します。ゴリラに相当するのが野生のお茶だとすると、野放茶はターザンに相当します。

野放茶は自然と同化した環境ゆえ成長が非常に遅く、それがはっきりと味に反映されてます。余韻が長く、後味が濃いのはもちろん、非常に透明感があり、透き通るような味わいと口に残る心地よい甘味が特徴です。

1. 劉家古樹生茶 2014-2017


2. 白鶯山古樹生茶 2017


3. 耿馬古樹生茶 2017 (未発売)

インプラントや銀歯で変化するお茶や食品の味

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銀歯やインプラントを初めとする、歯の治療や義歯に用いられる様々な金属ですが、実は味に多大な影響を与えます。一般的な「銀歯」による味への影響とインプラントに用いられる「チタン」の味への影響について説明したいと思います。

銀歯の味への影響

銀歯がどのように味に影響するかという点については以前に詳しく検証しました。銀歯による味の変化について詳しく説明しておりますので、興味のある方は是非以下のコラムをご参照ください。

銀歯で変化するお茶の味

実際、銀歯と言っても純粋な銀からできているわけではなく、パラジウム、銀、銅、亜鉛、イリジウム、スズ、他の金属の合金です。
銀歯の味への影響ですが、比較対象がないため、通常殆どの人は味が変化したことに気がつかないと思います。特に治療当日は痛みがあったり、様々な違和感があるため、味に集中できるような状況ではなく、実際には味が大きく変化しているにもかかわらず、それに気がつく人は非常に希です。


銀歯の味への影響ですが、ボディが非常に増し、コク(余韻・後味)が減ります。同時に舌のざらつきのような渋味を呈します。
私は幼い頃から虫歯になりやすい体質で、歯に関しては人一倍苦労をしてきました。現在でも数週間に一度は歯科クリニックにお世話になっております。私は数年前まで銀歯が7-8個ありました。しかし、銀歯が味にどう影響するか理解した後、4-5年かけて銀歯を徐々にセラミックに置き換え、昨年、全ての銀歯を無くしました。最後の治療では一気に3つの銀歯を除去しました。3つの銀歯除去前後における味の変化は流石に非常に顕著でした。味覚の透明度が増し、余韻がとても深くなっておりました。今までずっと食べていた味噌汁がとても美味しく感じられるようになったのが印象的でした。

インプラントをいれることによる味への影響

私は将来における細菌の感染による健康リスクを無くために、根管治療をした歯を、一本ずつインプラントへと変更しているところです。現在、左下奥歯6番にインプラント用のチタンの土台が入っております。チタンは生体の骨組織との相性が良く、骨と接着すると言われております。
面白い事に、チタンは味覚との相性も高く、チタンのマグカップでお茶を飲むと、ボディとコクの両方が顕著に増します。
インプラントをいれたことで、前にも増して食事が美味しくなり、お茶もよりコクとボディも増しました。インプラント導入前後で同じお茶を飲んでみたところ、インプラントの土台をいれた当初は、お茶の味が以前と全く違って感じられました。ボディも増しているため、お茶の香りも広がりがあり、より華やかに感じられるようになりました。まるで性能の高い朱泥急須を購入したくらいの効果があります。また、食事もコクが増すため、同じように食べていた漬け物や味噌汁の味が濃く、美味しく感じられるようになると思います。味が濃く感じらるようになったことで、以前よりも薄味を好むようになったと思います。

チタンによる私の職業上の弊害

ただし、私にとっては職業上の弊害もありました。チタンが口の中に入ったことで、どのお茶を飲んでもボディとコクが強く感じられてしまい、お茶の評価が以前に増して難しくなりました。コクについてはまだ、閾値に遊びがあるのですが、ボディの強弱の判断がしずらくなりました。
しかたがないので、お茶のボディを評価する際は、お茶を飲むのではなく、鼻から吸い込む香りで評価するようにしております。また、まもなくやってくる新茶シーズンに向け新しい品質評価テクニックを開発する必要がありそうです。

是非一度実験してみてください!

この記事を読んで、「まさか!そこまで変化しないでしょう?」と思われた人は、是非、純度の高いチタンのマグカップを購入し、テストしてみてください。チタンのカップは2000円前後で購入できます。チタンを通したお茶、ジュース、お酒、ビール、、、味の違いをガラスコップと比較してみるととても面白いですよ。

耿馬古樹生茶2017年産を発売

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耿馬古樹生茶2017(中国語読みGeng Ma)を発売しました。
http://www.hojotea.com/item/d87.htm

このお茶は2017年に仕入れたお茶の中でも、とりわけ野生に近い状態の茶園で収穫されたお茶です。野生茶ではありませんが、植えられてから今日に至るまで肥料や農薬は勿論、一切、管理が行われずに、自然のままに放置されておりました。農業と言えない状態で生育したお茶は、味にその性格が鮮明に表れております。野放茶ならではの透明感のある味わいは飲み続けることで、後戻りできなくなるほどに癖になります。HOJOの数あるラインアップの中でも特に自信を持ってお勧めするプーアル生茶です。

中国では自然栽培茶の中でも究極の野生状態の茶園を野放茶園と呼びます。野放茶園とは肥料や農薬はもちろん草も全く刈らず、放置した結果、野生化した茶園を指します。野生茶を例えるならゴリラですが、野放茶園はターザンに相当します。

一見、藪のような外観ですが、茶園です。

野生化した茶園産の茶葉を使用

茶園は少数民族の村2000m-2100mの標高に位置します。耿馬は正確には臨滄市耿馬タイ族ワ族自治県という地域で、雲南省の臨滄にある県の1つです。今回特に時間をかけて探したのは、自然栽培茶の中でもお茶の木が野生化した茶園、野放茶園です。日本でも農業の高齢化に伴い近年では放棄茶園を良く目にしますが、日本の放棄茶園は雲南省における野放茶園とは根本的に異なります。雲南省の野放茶園の場合、種をまいた時点から一切人の手がかかっておりません。。一度も肥料を与えてないため、お茶の木は長期にわたり自然の植物と同じように育っており、病気や虫にも強く、お茶の木は今もこの先も人の手を借りる必要がありません。また、放置栽培を前提としているため、お茶の木は日本の茶園のように高密度ではなく、疎らで、お茶の木の周りには大量の草木が茂っております。お茶が主役ではなく、お茶は数ある他の植物の中で共存していると言える状態です。お茶の葉は黄緑色をしており、お茶の木はサイズの割に少ない茶葉しか付けません。お茶がより時間をかけて成長するため一般のお茶よりも収穫時期が遅く、その結果、茶葉と茶葉の間(節間)が非常に短い茶葉になります。野生化したお茶の味は春の山菜と同じで、味と香りに雑味がありません。また、口にいれた際に、口蓋部分に不思議な甘味がじわりと残るのが特徴的です。また、味の特徴としてはボディが強く非常に広がりの強いお茶であり、同時に極めて後味がコク味香りの余韻が長く続きます。


お茶の素材の香りをより活かすため、腕のよい茶師にお願いし、緑茶の釜炒りに準じた方法で生産を行って貰いました。通常よりも少量の茶葉を投入し、高温に設定、そして、攪拌を頻繁に行うことで蒸気を出来るだけ拡散するようにしました。攪拌を頻繁に行うことで、茎部分をしっかりと殺青しつつも葉が蒸気の結露で茹だらないように注意しました。この作り方は高い温度を用いるため、焦がさないように仕上げるのが非常に難しく、高い技術力が求められます。色々なお茶で実験してみたところ、この方法だと素材の味香りが温存されるため、一般的な茶園産の茶葉(1芯3-4葉)を用いた場合、むしろ苦味や渋味が強く出て、また、青臭さが非常に気になるお茶になります。生の茶葉の質が飛び抜けて良いために、良くも悪くもお茶の変質がダイレクトに反映される作り方を採用しました。春に耿馬古樹生茶の毛茶を予約販売しましたが、残りは餅茶に緊圧しました。毛茶は独特の清涼感有る香りがし、非常に個性的で美味しいお茶でしたが、餅茶に緊圧し半年寝かせたことで、全く異なる性格のお茶に生まれ変わりました。良くも悪くも尖った部分が緩和され、非常に優しい香りへと変化しました。清涼感があり、非常にクリーンな飲み心地ゆえに一瞬、白茶のようにも感じられ、マレーシアの店舗では非常に人気のお茶となっております。

毛茶(緊圧前)の写真です。自然栽培茶ゆえに黄色身かかった茶葉を原料として用いているのですが、特殊な釜炒り方法ゆえに、お茶をいれたときに、茶殻の色合いが一般的なプーアル茶よりも鮮明な緑色をしております。

写真は毛茶を入れた様子

終わりつつある老木ブームと自然栽培茶ブームの兆候

過去10年程中国では老木から作られたプーアル茶のブームが続いておりました。猫も杓子も老木を求め、生産者も何かというと老木という点を強調してお茶を販売しており、老樹や古樹という言葉がプーアル茶の代名詞のように用いられておりました。ただし、ここ数年、自然栽培茶の需要が急速に伸びつつあることを感じます。今まで余り注目されていなかった、自然栽培茶園ですが、ここ数年原料の値段が上昇しており、特に野放茶園のような野生化した茶園については、原料の確保が他のバイヤーとの間で競争になる事もまちまちです。

 

中国紅茶によくある工夫紅茶とはどのような紅茶を意味する?

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中国茶関連の書籍には工夫茶(中国語では功夫茶)という名称が良く用いられております。ただ、工夫茶の意味に関しては、割と曖昧で深く理解されていないのが実情かと思います。例えばキームン紅茶は工夫紅茶と言われますが、何がどう工夫紅茶か想像できますか?工夫紅茶の意味に関して私の経験を元に説明したいと思います。

工夫は創意工夫の意

工夫茶(功夫茶)の工夫ですが、日本語では昭和の時代にはカンフーとも呼ばれており、少林寺拳法の代名詞のように使われておりました。カンフーを中国語で書くと功夫(中国語読みではGong Fu )となります。功夫(工夫)は、労力、努力、創意工夫という意味であり、工夫茶とは非常に創意工夫と労力によって作られたお茶という意味になります。日本語における工夫に加え、労力や苦労などのニュアンスも含まれます。因みに英語ではクラフトビールなどに代表されるCraft、或いはArtisanがこれに相当する言葉になります。

工夫茶は潮州と武夷山でほぼ同時発生

中国におけるお茶の歴史を調べると、1600年代前半までは緑茶が中心であり、殺青→揉捻→乾燥(焙煎)という工程で作られておりました。ところが、1600年中盤になると、潮州や武夷山において、烏龍茶や紅茶などの発酵茶が開発されました。これらのお茶は従来の緑茶と異なり、萎凋発酵作業を伴い、更に、お茶の香りをより引き立てるために、100℃以下の温度で6〜24時間ベイキングを行う、炭焙という技術が用いられました。工夫茶の発祥ですが、福建省武夷山とも潮州の鳳凰山とも言われておりますが、様々な歴史書を見る限り、ほぼ同時発生的に生まれた可能性が濃厚です。中国の生産者は「売れるお茶」を作る事に対して非常に貪欲であることから、近隣地域で人気のお茶が開発された場合、その技術は周辺地域に瞬く間に伝播します。私の個人的な見解としては、潮州の鳳凰単叢烏龍茶がやや先に開発され、それが武夷山に伝播したと考えております。その根拠として、武夷山の最も樹齢が古い水仙種の木は400歳位なのに対し、鳳凰山には500歳を超えるお茶の木が沢山ある点です。潮州人は工夫茶というのは潮州のお茶の代名詞と考えています。

鳳凰単叢烏龍茶の選別風景

鳳凰単叢烏龍茶の炭焙の道具(焙籠)

工夫紅茶の先駆けは正山小種(ラプサンスーチョン)

近年では、ありとあらゆる中国紅茶に対して「工夫紅茶」の名称が用いられる傾向があります。実際、工夫紅茶と普通の紅茶に違いはあるのでしょうか?
工夫紅茶の先駆けは正山小種(ラプサンスーチョン)と考えられております。また、同時期に鳳凰単叢烏龍茶の故郷の鳳凰鎮でも類似の紅茶が作られていたようです。鳳凰鎮における工夫紅茶は現在も作られております。1600年代の正山小種は、丁度東方美人の作り方に準ずるような烏龍茶に近いやり方で萎凋を行い、発酵を軽めに行った上で、100℃以下の低い温度にて長時間のベイキングが行われていたと推察します。ベイキングにより、お茶の成分が化学変化を起こし、鳳凰単叢烏龍茶に代表されるようなフルーツや濃厚な花や蜜のような香りが形成されます。1600年代方式の正山小種は華やかで甘い香りがします。(HOJOの商品では正山小種 小赤甘がこれに相当)それに対して、1800年代に開発された正山小種は松の木を燃やした熱でベイキングを行うため、煙の香りがします。現在も両タイプの正山小種茶が存在しますが、1600年の方式のお茶は生産に手間がかかることから非常に高額です。

工夫紅茶とはどのような紅茶を指すのか

1600年代に開発された正山小種の場合、2つの「工夫」により作られます。1つ目は萎凋が行われている点、2つめは乾燥終了後のお茶を100℃以下の低温で長時間ベイキングして仕上げることです。
この作り方はキームン紅茶にも継承されております。それもそのはず、1800年代に正山小種を模倣して作られたのがキームン紅茶です。当時中国国内外での正山小種紅茶の需要の高まりから正山小種の値段が高騰しました。この為、当時お茶の値段が非常に安価であった安徽省の祁門県にて正山小種の作り方を模倣した紅茶が作られたのです。キームン紅茶については正山小種と比べるとやや工程が省略されている点はあるもののか萎凋+微発酵+ベイキングという工程を踏んでおり、正しく工夫紅茶と言えます。

特に工夫紅茶の明確な定義があるわけではありませんが、私はベイキング(炭焙)の有無が工夫紅茶の大きな特徴と考えております。ベイキングで、甘い香りを引き出すために、萎凋を長く行ったり、発酵を浅めに行う点も特徴の1つです。逆に英徳紅茶、雲南紅茶、台湾の紅玉紅茶、ダージリンやセイロンティに関しては、基本、萎凋→揉捻→発酵→殺青→乾燥でお茶が完成します。例えば雲南紅茶の製法では、萎凋は数時間と短く発酵を長時間行い、ベイキングは120℃で短時間行う場合と乾燥のみで全くベイキングしない方法があります。雲南紅茶も工夫茶と呼でいる書籍や生産者もおりますが、私は雲南紅茶はどちらかというとオーソドックスな紅茶と定義しております。

台湾を代表する烏龍茶の1つである文山包種茶を発売

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文山包種茶を発売しました。文山包種茶は台湾茶を代表するお茶の1つで、茶葉は緩く揉まれ、極めて軽く発酵をすることで甘い花のような香りがするお茶です。多くの専門家は、烏龍茶は生産が最も難しいお茶と評します。それは烏龍茶の酸化度(発酵度)が10-80-%と広く、酸化度の制御がが非常に難しい事に起因します。文山包種茶はその中でも、特に発酵が軽いお茶の1つです。この為、始めて飲む人に、緑茶と勘違いされることもしばしばあります。文山包種茶は非常に強い花の香りと、仄かに緑茶的な香りを伴い、甘く、爽やかな味が特徴です。

http://www.hojotea.com/item/o11.htm

近年非常に多い青海苔のような香りの文山包種茶

文山包種茶と言えば、花や柑橘系の果物のような香りがトレードマークとして知られております。近年、多くの文山包種茶を飲むと青海苔のような香りがすることがあります。事実、台湾の産地で仕入れを行っていても多くの文山包種茶は青海苔のようなやや青臭い香りがします。生産者の多くは、これが文山包種茶の香りだと言い張りますが、私の記憶では昔は多くの文山包種茶が本当に花の香りがしておりました。なぜこのような変化が生じたかという点ですが、乾燥後に熱いまま包装してしまう等、冷却が不十分な為と考えております。本来、お茶は加熱した後は空気を送って冷却する必要があります。熱い状態の茶葉は蒸気を発生するため、茶葉表面が結露し、茶葉は酸化します。文山包種茶が酸化すると、まさに青海苔のような香りがします。近年は海苔の香りがする文山包種茶が非常に多く、私が満足できる香りのお茶は非常に少ないと感じております。そこで、HOJOでは自社にて低温でのベイキングを行うことで、文山包種茶本来の花の香りを再度引き出し、尚かつ、結露しないように即冷却しております。昔ながらの、花のような香りの文山包種茶を是非お楽しみください。

文山包種茶の歴史

文山包種茶は100年以上の歴史を有します。また、台湾の文山地区は最初に烏龍品種の茶樹が植えられた地域と言われております。包種茶の名称は最初、福建省の安渓や福州で用いられておりました。包種という名称の由来は、お茶の包装方法に起因します。1820年頃、安渓のお茶は武夷山の烏龍茶の作り方を模倣して作られておりました。ただ、当時安渓で作られた烏龍茶は、福州へと送られ、そこで花の香りを吸わせ、フレーバー烏龍茶として売られておりました。このお茶は、紙に包まれ、長方形の箱状のパッケージで販売されていたことから、包種茶と呼ばれておりました。中国語で包種は「パッケージの種類」という意味合いがあります。1873年には台湾の文山地区で烏龍茶が作られるようになりました。当時、世界経済は芳しくなかったことから、お茶市場も景気が悪く、加え、台湾茶の値段が高かった事から、台湾の貿易商人は台湾製の烏龍茶を買おうとせず、その結果、大量の売れ残りの在庫が積み上がりました。この状況を打破するため、台湾の生産者は当時、売れ残った烏龍茶を福建省へと送ることで花による着香を行い、そのお茶はフレーバー茶として東南アジアにて販売されました。安渓産の包種茶と同じく、台湾のフレーバー烏龍茶も紙で包まれていたことから、包種茶という名称で呼ばれました。1881年になると、福建省から茶師を台湾へと招聘し、台湾国内にて、フレーバー茶が生産され、同じく東南アジアで販売されてました。1885年以降、更に、包種茶の品質や加工方法を改善するための研究努力が行われました。その結果、微発酵技術が開発され、自然な甘い花の香りを引き出すことに成功しました。現在は紙の袋に初摘まれておりませんが、当時の名称を踏襲し、今も包種茶(文山包種茶)と呼ばれております。

文山包種茶の生産地域と品種

文山包種茶の主要な生産地域は、台湾の新北市の文山区の坪林郷周辺に分布しております。この地域は比較的台北から近く、標高は600-800m程です。主な品種は青心烏龍であり、深みのある香りが特徴です。栽培品種は青心烏龍です。

文山包種茶の加工詳細

文山包種茶は台湾の烏龍茶の中でも最も発酵度が低いお茶であり、軽めに揉むことで作られます。この事から、多くの人は生産が比較的簡単であると考えがちですが、実際はその逆です。発酵度が低いため、非常に正確に発酵を制御する必要があり、その為には茶葉の形状を均質にする必要があるため、茶摘みの段階から入念な管理が必要になります。

1.茶摘み

文山包種茶の茶摘みは4月の上旬位がシーズンです。通常、1芯2-3葉の茶葉が手で摘まれます。茶摘み中や輸送中に茶葉に傷がつくと、意図せず発酵が始まり、文山包種茶特有の花のような香りを引き出すことが出来ません。したがって、茶葉の取り扱いは非常に慎重に行う必要があります。HOJOでは春茶のみを仕入れております。

2.屋外萎凋

茶葉は薄くシートの上に広げられ、天気の日は10-20分、曇りの日は30-40分の日光萎凋が行われます。この間、茶葉の温度は30-35℃に維持する必要があります。40℃を超えると茶葉が熱によって劣化します。この工程の目的は茶葉の水分を減らし、その後の工程で発酵がしやすい状態にすることです。

3.室内萎凋

理想的な酵素反応に必要な環境は室温23-25℃程度で相対湿度が70-80%です。屋外での日光萎凋を終えた茶葉は、竹のござのうえに広げられ、手作業により茶葉を穏やかに攪拌する作業が行われます。この作業による摩擦等で茶葉の縁には微細な傷がつき、それにより、茶葉に含まれるポリフェノール類と酵素が触れ酸化が始まります。攪拌作業の後、茶葉は竹のシートに静置され、発酵を促進します。一見すると簡単な作業ですが、茶葉を均質に攪拌し、発酵のレベルを正確に制御するのは非常に高い技術を要します。攪拌が強すぎた場合、茶葉の縁は赤く変色し、花の香りが弱まり、同時に渋味を呈します。また、攪拌が弱すぎた場合、茶葉は水分を蒸発しつづけるため、発酵が不十分となり、青臭い香りが際立ちます。攪拌作業は非常に穏やか且つ、効果的に行う必要があり、熟練の技術を必要とします。

4.殺青

お茶が十分に発酵した時点でお茶はステンレス製のドラムにて140-160℃で加熱されます。この工程は茶葉含まれる余分な水分を蒸発させると同時に、熱によって酵素を失活させ、さらに、茶葉を柔らかくする目的があります。茶葉がこげない範囲であれば、出来るだけ高い温度で熱処理するほど、出来上がったお茶は、よりフローラルでノイズのない透明感のある香りになります。温度が低過ぎたり、加熱時間が不十分な場合、残存する酵素が活性化するために、お茶が不透明になり、発酵が進みすぎることで香りが弱く、舌に不快感を伴う渋みが生じます。逆に加熱をし過ぎた場合、茶葉の水分が無くなるため、加熱温度が100℃を超え、その結果焦げが生じたり、茶葉に含まれるお茶の粉が増加します。また同時に熱の影響で香りの弱い お茶になります。

5.揉捻

揉捻は軽めの圧力で行います。揉捻をする事で茶葉をコンパクトにし、同時に細胞に微細な傷をつけ、お茶をいれたときにお茶が抽出されやすくします。

6.乾燥

揉捻が完了した茶葉は乾燥され水分を5%前後に調整されます。乾燥は100-105 degree C で 25-30分の場合や、2段階の乾燥で最初に105-115℃で10分、次いで85-95℃で40-60分などの方法で行われます。処理量によってパラメーターが変化します。

紅茶のような甘い香り白鶯山古樹白茶2017年産を発売

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HOJOの白茶の定番の白鶯山古樹白茶 2017年産を発売しました。今年は萎凋を長めに行うことで、ダージリン紅茶を連想するような甘い香りのお茶に仕上げました。非常に香りが強いお茶ゆえに、紅茶が好きな人に是非ともお勧めしたいお茶です。このお茶はコク(余韻・後味)が非常に強く、ボデイ(ふくよかさ・広がり感)は穏やかで、飲み終わった後も強く印象に残るお茶です。
http://hojotea.com/item/w08.htm

肥料を与えないと農薬も不要

白鶯山は臨滄の雲県にある山の名称です。この山は非常に知名度が高いため、雲南省の空港などでも白鶯山の名を冠したプーアル茶を良く見かけます。ただ、高い知名度ゆえに、大多数の茶園は肥料栽培を行っており、多くのお茶は味に奥行きが無く、名前負けをしております。一般的に名声と品質は反比例関係にあります。HOJOでは濃厚な後味(コク・余韻)を求め、無肥料無農薬で、自然のままの状態になっている茶園を選び、原料茶葉を入手しております。無肥料の茶園は、お茶の成長が非常に遅く、味わいや香りが濃厚なお茶になります。また、茶葉に含まれる窒素分が極めて低くなることから、農薬を使わずとも昆虫があまりつかない性質を有し、結果的に農薬が必要としません。

加工法で決まる白茶の定義

白茶とはお茶の木の品種や茶葉の白い外観の呼称ではなく、緑茶、紅茶、烏龍茶などと並び、6つあるお茶のカテゴリーの1つです。お茶のカテゴリーは製茶方法によって決まります。この為、例え外観が黒くても、白茶の作り方を踏襲していれば白茶と呼ばれます。
雲南省の伝統的な白茶の作り方は、数日間の萎凋→そのまま自然乾燥か天日乾燥と非常にシンプルです。萎凋とは時間をかけて水分を落とすことで、脱水ストレスによりお茶の酵素酸化の発酵を促す工程です。雲南省における白茶の作り方の場合、自然乾燥で水分を無くすため、長時間の萎凋が特徴です。一見すると、ただ放置しているだけのように見える白茶の加工ですが、萎凋の際には湿度と温度の管理が非常に重要であり、天気を注視しつつ生産計画を練る必要があります。雨が数日続くと、湿度が上がるため、萎凋中に酵素発酵が急速に進み、茶葉が蒸れることで、発酵が行き過ぎてしまいます。どのようなお茶を作りたいかという商品設計に基づき、萎凋時間を調節します。白鶯山古樹白茶2017年については、しっかりと萎凋をすることで、紅茶の様な香り高いお茶に仕上げました。

長時間萎凋を行うことで紅茶の様な香りを実現

私はシーズンが始まる前に、雲南省へと入り、生産者と、使用する茶葉原料、加工法を打ち合わせることで、特注にて本商品を生産しました。2016年に発売した白鶯山古樹白茶2016は、萎凋を短めに制御することで、フローラルな香りを引き出しました。このお茶は現在も在庫がありますが、餅茶に加工されたHOJOの白茶のなかでもひときわ香り高いお茶です。今年同産地から白茶を仕入れるに当たり、同じ性格のお茶が重複しても意面白くないため、今回は、乾燥速度を遅め、萎凋を72時間以上、行うことで、ダージリンオータムナル紅茶の様に甘い香りを引き出しました。萎凋の後半になると、萎凋室はフルーツのような香りで充満しており、そこにいるだけで美味しいお茶を飲んでいるような気持ちになりました。緊圧したことで、香りは多少落ち着きましたが、お茶を淹れると甘くい濃厚な香りが感じられます。香りは、水飴や蜂蜜に近く、非常に甘いです。ダージリンオータムナルが好きな人にもお勧めします。

プーアル茶よりも早い熟成速度

白茶は熟成することで味香りが変化します。熟成に関しては一般にプーアル茶が有名ですが、近年中国では白茶の熟成がブームになっております。白茶はプーアル茶の数倍の速度で熟成するため、短中期間で熟成の結果が目に見えて分かります。これは白茶が微発酵茶であることに関係しており、数年での熟成でも、とても分かりやすく香りが変わるため、熟成のし甲斐があります。HOJOでは長期の熟成をしやすいように餅茶(200g)の形状に緊圧しております。熟成を行う際には、未開封のまま、できるだけ温度の高い場所にて保管してください。熟成することで、蜜のような(マスカテルフレーバー)がより強くなり、より華やかな香りへと変化します。

雲南省の自然栽培茶から白茶を作る意味

白茶というと、日本では福建省のお茶がよく知られております。近年では福建省でも白牡丹を餅茶に加工したお茶が沢山流通しております。ただ、福建省の白茶は例外なくどれも慣行栽培の茶園産で、肥料栽培が基本であり、お茶の木の樹齢も低いことから、お茶の味が非常に軽く、余韻が短めです。この点、雲南省の標高2000M以上有る茶園に自生する、樹齢が100歳を超えるような自然栽培の老木は、後味の濃さ、お茶の滑らかさ、余韻の長さなどが突出してすぐれております。お茶を飲んだ後にも、香りが何時までも口の中に残り、非常に飲みごたえのある味わいです。

渡辺陶三作の無名異焼手作り急須各種発売

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渡辺陶三氏作の無名異焼の茶器が沢山入荷しました。今回入荷したのは、秋津無名異酸化焼成、秋津無名異還元焼成、無名異上赤急須です。

秋津無名異 酸化焼成

ふくよかさ、言い換えるなら、ボディ、つまり、香りの広がりが非常に華やかな土です。どのお茶にも合いますが、特に紅茶と烏龍茶を淹れると、別のお茶かと思うほどにお茶の香りに変化が生じます。
今回は100-200mlの容積の後手急須が多く入荷しました。

http://www.hojotea.com/item/tozo_akitsu.htm

秋津無名異 還元焼成

ふくよかさは酸化焼成よりも軽く、逆にコクは酸化焼成よりも強く感じられます。ふくよかさとコク(余韻・後味)のバランスの良い土です。味の奥行きと広がりが同レベルであるため、お茶の味がとても円く感じられます。どのお茶に対して相性が良いと思います。
今回は入荷したモデルの半数が窯変モデルでした。窯変とは、火の燃え方によって、急須表面の色合いに生じる色合いの変化のことです。今回は不思議な色合いの窯変が生じております。一見すると、子供の頃捕まえた、ミヤマクワガタの背中のようです。使い込むことで、更に落ち着いた深い色合いになると思います。

http://www.hojotea.com/item/tozo_akitsu_reduction.htm

無名異上赤

佐渡島の相川金山の坑道から採取された赤土です。佐渡島の無名異焼作家の間では、上赤と呼ばれ、極上の土としてしられております。味の点では、ボディは秋津無名異と比べると軽めゆえ、逆に余韻(後味・コク)が際立って感じられます。緑茶を淹れるときや、火が強く入った烏龍茶との相性が良いと感じております。

http://www.hojotea.com/item/tozo_joaka.htm


なぜダージリンティの香りは華やかなのか?

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ダージリンティは独特の香りがあり、この香りゆえに多くのファンを有します。このダージリン紅茶特有の香りですが、製法が深く関係しております。言い換えるなら、同じような製法で作れば、他の地域産のお茶でもダージリンティに近い香りに仕上げる事が可能です。

他の紅茶にないダージリンの華やかで甘い香り

ダージリンの香りというと、特徴的なフローラルで蜜のような華やかで甘い香りです。春摘みのファーストフラッシュは爽やかな花のような香り、秋摘みのオータムナルはフルーツのような蜜のような香りがします。インドのダージリン関係者からは、ダージリンの香りはダージリンの環境、標高、茶葉が作り上げていると説明を受けることが一般的です。確かに、ダージリンにある特注のお茶品種やその亜種も少なからず、香りの傾向に寄与しているのも確かです。また、高い標高においては、お茶の成長がゆっくりとなる事から、ミネラルとポリフェノールが豊富に含まれ、その結果、より濃厚な香りを創り出します。ただ、これらの要素だけでは、ダージリンの香りを説明するには不十分です。

ダージリンの特有の香りは萎凋が深く関係する

私の経験上、ダージリンティの華やかな香りはダージリン特有の萎凋方法に起因すると考えております。萎凋とはお茶の葉を徐々に萎れさせることで、茶葉に含まれる酵素(酸化酵素)を脱水ストレスによって活性化し、微発酵を行う工程です。微発酵により、茶葉は甘い、花や、フルーツのような香りを形成します。中国の紅茶の場合、竹のザルやござに茶葉を薄く広げ、日陰にて自然に萎凋を行う方法が一般的ですが、ダージリンの場合、萎凋を、萎凋層という、底面から風が出るボックス内で行います。ダージリンでは常に風を送り続けることで、効率的に萎凋を促進し、非常に華やかな香りを引き出しております。

例えダージリンと同じ萎凋をしても発酵止めにより香りが大きく左右される

紅茶作りをする上でもう一つ重要な工程は、発酵を熱によって止める工程です。温度を正確に管理しなかった場合、加熱によって、酵素が過度に活性化し、発酵が行き過ぎてしまいます。比較的多くの日本製の紅茶が蒸れ臭がするのはこの為です。例え、萎凋が理想的に制御できていたとしても、その後の発酵止めを正確に行わなかった場合、華やかな香りを享受することはできません。これは烏龍茶の生産においても同じで、非常に手間をかけて、萎凋や発酵を行っても、発酵止め(殺青)が正確に管理できてない場合、花やフルーツの香りに蒸れ臭や雑味を伴います。ダージリンの華やかな香りを引き出すには、重点的な萎凋と正確な発酵止めの両技術が必要となります。

重点的な萎凋+雲南省の自然栽培茶で紅茶をつくりたいという願望

私は過去8年間毎年1ヶ月程雲南省に滞在し、原料選定をし、お茶の特注生産をしています。近年ではノウハウが蓄積され、無肥料無農薬の自然栽培茶による非常に良い原料を入手できるようになりました。そこで、雲南省産の良い原料を使い、ダージリンに準ずるような華やな香り紅茶作ってみたいと考えております。

私が普段仕入れを行っている自然栽培茶園の場合、平均的な標高が2000-2200mあり、ダージリンの最も高い茶園とほぼ同じです。「だったら、わざわざ雲南省のお茶でつくらずとも、ダージリンティで十分だ」と思われるかも知れませんが、雲南省の自然栽培茶を使うことには大きな意味があります。樹齢が100歳以上の、肥料も農薬は勿論、人の手を全く手を加えず、放置された自然栽培茶の場合、原料の質が比にならないレベルで優れております。現在雲南省でつくられている、伝統的な雲南紅茶は、萎凋を短く軽めに行い、深めに発酵する製法が特徴です。それはそれでとても美味しいお茶なのですが、私は、雲南省の自然栽培茶を原料に、48時間くらいしっかりと萎凋を行い、軽めに発酵させ、更に、必要であれば、昔の正山小種のようにベイキングによりフルーツの香りを高めたお茶を作ってみたいと考えております。生産者が何処まで私のわがままを聞いてくれるか、色々交渉せねばなりません。

オクミドリ単一品種からなる朝比奈本玉露を発売

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静岡県藤枝市岡部町を産地とする朝比奈玉露から、単一品種であるオクミドリのみから作られた本玉露を発売しました。名称は「玉露おくみどり」です。
http://hojotea.com/item/g45.htm

玉露は茶園に当たる日光を意図的に制限して作られたお茶

玉露は茶園を藁やプラスチック製の寒冷紗で被覆することで、茶葉にあたる日光を制限して栽培されます。日光を制限する事で、茶葉内の成分の生合成に影響を与え、それによって玉露特有の香りと味を作り上げます。また、茶葉は効率的に日光を吸収するために、大量の葉緑素を合成します。この為、玉露の茶葉は煎茶の茶葉と比べるととても濃い緑色をしており。更に、玉露の茶葉はより多くの日光を吸収するために茶葉が大きく、茶葉表面に襞が見られます。

生産者の宮崎さん

 

伝統的な藁で被覆して作られる本玉露

本商品は本玉露と呼ばれる玉露です。本玉露とは、藁で被覆した茶園で作られた玉露のことです。これに対して、近年殆どの玉露茶園は寒冷紗と呼ばれる黒いプラスチックを用いて被覆されます。本玉露と普通の玉露を飲み比べると、美味しさ、飲んだときの満足度共に大きな差があります。決定的な違いは味と香りに生じます。寒冷紗で被覆した玉露も、藁で被覆した玉露も、アミノ酸由来の旨味という点ではどちらもあまり差がありません。海苔のような玉露独特の香りという点でも、どちらの玉露もその基準を満たしております。決定的に違うのは、本玉露の味と香りの奥深さです。コク、「喉越し」、或いは、余韻の長さが本玉露は一般の玉露よりも強い点が特徴です。これは、藁に含まれているミネラルが雨と共に茶園に滴り落ちることで、お茶に吸収されるためです。この為、被覆に用いる藁、また、その作り方も、玉露の味に大きく影響を与えます。玉露の生産者は、良質な藁を得るために稲作も自分で行うことが一般的です。

オクミドリのみを使用することでふくよかな味わいに

通常、玉露は複数の品種をブレンドすることで作られます。これは品評会で受賞するような玉露でも例外ではなく、ブレンドすることで、味とコストを調整する目的があります。品種によって、コクが強いタイプやふくよかさが豊かなタイプがあり、ブレンド比によって、バランスの良い香りが形成されます。ただ、本商品は、敢えて、ブレンドをしない、単一品種のみから作られた玉露です。オクミドリは数ある品種の中でも、最も成長が遅い品種の1つであり、玉露茶園のなかでも最後に収穫が行われます。オクミドリの特徴は、ふくよかさ(味の広がり・ボディ)が非常に強い点です。口に含んだときに、香りが広角レンズのように広がり、とても豊かな味わいです。代わりに余韻については、朝比奈玉露の名称で販売している弊社商品と比べると、やや軽めです。

半年以上寝かすことでより香りを高めました

新鮮な茶葉の香りをそのままにお届けするため、火は一切いれておりません。農家で製茶したお茶を製茶直後に直接仕入れております。ただ、香りを更に高める為、半年ほど、無酸素状態にて常温で寝かしました。寝かせたことで、香りが高め、華やかなさを増しました。

お茶の味を大きく左右する湯沸かしの選び方

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お茶をいれる際、急須の材質にはこだわりがちですが、意外に見過ごされているのがやかんの材質です。やかんの材質が不適切な場合、どんなに良い急須を使っても、お茶の本来の味香りを楽しむことができません。また、不適切な材質の湯沸かしを使用しつづけると、急須にも悪影響を与えます。

お湯を沸かすのにお勧めはステンレスの湯沸かし

私も様々な種類の湯沸かしを使用した経験がありますが、結論としては、ステンレスのヤカンをお勧めしております。中国でのお茶の専門家の多くはステンレスの湯沸かしを使用し、2割くらいの人はガラスの湯沸かしを使用しております。ガラスも無難な選択です。


ステンレスと言っても、使用されている材料によって金属の含有割合は様々ですが、私の経験上、鉄が何パーセント、ニッケルが何パーセント等、そこまで細かくこだわる必要は無いように思います。ただ、注意すべき点としては、ステンレスのやかんを使用しているつもりでも内部にアルミや銅など、異なる材質の金属が使用されていることがあります。その様な場合、やかん本体の材質がステンレスでも味に悪影響を与えます。

山奥のお茶生産者でも中国ではステンレスの湯沸かしが一般的

アルミ、銅、真鍮、銀はお茶に不向き

質の高いお茶飲む際に、お勧めしない材質はアルミ、銅、真鍮、銀です。これらの材料は余韻をカットし、渋味を呈します。お茶は質が高くなればなるほど余韻が長く、後味が濃く感じられます。お茶が好きな人は、この感覚が好きで良いお茶を求めるわけですが、前述した材料のやかんを使用した場合、折角の良いお茶も余韻が消えてしまうため、これらの材質を選択することは高品質なお茶を楽しむ上で致命的です。銅は時として味にプラスの影響があると思われがちですが、銅の場合、ふくよかさを高める反面、余韻をカットし、渋味を呈する性質があります。質の低いお茶やコーヒーを淹れた場合、もとのお茶自体にふくよかさと余韻がないため、特に影響はありません。

雰囲気があってオシャレでも真鍮はお茶に不向き

土瓶を初めとする陶製の湯沸かしをお勧めしない理由

また、あまりお薦めしないのは陶製の湯沸かし(土瓶)です。台湾製を中心に陶器の湯沸かしが多く流通しております。また、台湾の茶館などへ行くと、陶器の湯沸かしはごく普通に使用されております。外観的にはとても美しい陶製の湯沸かしですが、多くの陶器は、お茶の味への素材の影響を意識して材料が選ばれておりません。その多くが、ふくよかさは増すものの、渋味を呈し、水の余韻をフラットにする傾向があります。勿論、例外もあるとは思いますが、非常に希です。また、弊害として、陶製の湯沸かし(土瓶)などでお茶を淹れ続けると、その材料由来のミネラルが急須の内面に吸着することで、急須自体のの性能も劣化します。私の経験上、約1週間ほどで急須を通したお茶の味が劣化します。その後、湯沸かしをステンレスに戻しても、数ヶ月間使い続けないと急須の性能は元に戻りません。

鉄瓶選びと急須との組み合わせには注意が必要

鉄瓶は水の味を美味しくすると一般に思われておりますが、必ずしもそうでは無い場合もあります。鉄瓶の材料は、鉄100%なではなく、メーカー毎に材料は異なります。また、鉄瓶内面の補修に使用される材料もメーカー毎に異なり、それも味に影響します。私の経験上、中には余韻を消去してしまう鉄瓶もあり、全てのメーカーの鉄瓶が水の味を円やかにするわけではありません。鉄瓶選びをする際には、メーカー毎に良くも悪くも味が異なる点を意識することが大切です。
鉄瓶には、また、必ず急須との相性があり、合う急須と合わない急須があります。相性が合わない場合、鉄瓶単体のほうが、鉄瓶+急須よりも水の味が良いという場合もあり、注意が必要です。このようなややこしい事情から、鉄瓶を使用する際には、陶器の急須ではなく、磁器やガラスの急須を使用し、逆に、陶器の急須を使用する際には、ステンレスのヤカンで沸かした水を使用するのが無難です。

意外に実用的で味が良い市販品の電気ポット

最後に、意外にお勧めなのは象印やタイガーなどの大手メーカで販売している電気ポットです。内面がガラス製であることを確認する必要があります。一般に98℃の保温設定ができるようになっております。実際にやかんで沸騰させても、湯を注ぎだしたときには96℃くらいまで下がっていることを考慮すると98℃設定は非常に実用的です。長期間使用していると内面にミネラル(カルキ)が付着し、更に味が美味しくなります。このような理由から、機能的に問題がない限り、カルキは除去すべきではありません。

私は美味しいお茶を入手する為に、現地まで赴き、お茶の仕入や加工に尽力しておりますが、折角の良いお茶を入手しても、不適切な材質の道具を用いた場合、お茶の品質が飲む人に伝わりません。結果、美味しくないのはお茶が原因と思われることも多くあり、非常に心苦しく思います。お茶にこだわる人は茶器にもこだわりがちですが、湯沸かしを選択する際には是非上記の情報を参考にして頂けると幸いです。

普段飲み茶にお勧め!安渓色種を発売

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安渓産の「色種」という烏龍茶を発売しました。色種は複数の品種をブレンドすることで、余韻の長さ、香りの広がり等を絶妙に調整しております。色種の質は個々の原料の質は勿論、ブレンド技術により決まります。とても美味しいにもかかわらず比較的低コストのお茶ゆえ普段飲みに強くお勧めするお茶です。

色種とは複数の品種のお茶をブレンドして作られる安渓の伝統的な烏龍茶

色種は一般的に毛蟹, 梅占, 黄金桂, 本山等を中心とする複数の烏龍品種をブレンドすることで作られる、中国福建省安渓の伝統的な烏龍茶の1つです。ただし、使用する品種はこれら4つの品種でなければならないわけではなく、生産者によってブレンドに用いられる品種は様々です。実際、鉄観音や肉桂のような品種を用いた場合、単一品種でも非常に魅力的な個性の香り味が得られます。ただし、これらのお茶は成長速度と収穫量が非常に少なく、市場での需要も高いために、非常に高価になりがちです。その点、色種が面白いのは、複数のお茶をブレンドすることで、お互いのお茶が余韻、香り、広がり等のそれぞれの性格を補い合い、安価にもかかわらず、とても美味しく感じられるお茶に仕上げられている点です。例えば、毛蟹という品種は、余韻は弱いものの非常にふくよかなお茶です。黄金桂は、極めて華やかで魅力的な香りのお茶です。本山は余韻が比較的強く、豊かな味がします。それぞれのお茶の個性を理解した上で、ブレンド比を調整する「合わせ技」で魅力的な香りと味を実現しているのが色種と呼ばれる烏龍茶です。色種は中国語で「いろんな種類のお茶」という意味合いです。色種の面白いところは、生産者によって、ブレンド比が全く異なるため、同じ色種という名称がついていても、味も香りも似て非なるお茶である点です。

春摘みの一番茶を使用

原料は安渓の大坪村周辺、標高1000M付近で生産された春の一番茶を使用しております。安渓の烏龍茶は中国国内での需要が非常に高く、真夏に安渓を訪問したとしても、烏龍茶を作っている農家を多数目にします。烏龍茶の場合、春が良いとか、秋がよいとか言われますが、実際にテイスティングをすれば一目瞭然で、比較するまでもなく春茶が優れております。秋のお茶は香りが強く感じられるため、第一印象はよいのですが、渋味があり、味も春茶ほど滑らかではありません。

香ばしく甘い香りがし普段飲みにお薦め

安渓色種は中焙に仕上げました。香ばしい香りと、乾燥フルーツのような、カラメル、焼き芋のような甘い香りが特徴です。また、飲み終わったとに、花のような爽やかな香りが口に残ります。又このお茶は値段の割に余韻が長く、後味がしっかりしているため、飲みごたえがあります。様々な料理やスイーツとの相性が良く、食昼食後のお茶としても非常にお勧めします。HOJOの烏龍茶の中では比較的手頃な価格帯の烏龍茶ゆえ、普段飲みのお茶としてお勧めです。

1つの急須で沢山の種類のお茶を淹れても良いかどうか?

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1つの急須を複数の種類のお茶で共有しても良いかどうかと質問されることが頻繁にあります。特に東南アジア、西洋のお客さんほどこの点を気にされる傾向があります。複数のお茶を1つの急須でいれると、急須の性能が落ちてしまうことを懸念されての質問です。私は経験上、急須は複数のお茶で共有しても問題無いと考えております。ただし、幾つかの注意点があります。

急須の性能に影響を与えるのは香り成分ではなくミネラル

私の経験上、1つの急須で、緑茶や紅茶、時には烏龍茶等、いろんなお茶をいれることに対して日本人の多くはあまり抵抗がないように思います。反面、東南アジアや西洋のお茶愛好家の間では、1つの急須は特定の種類のお茶に対してのみ使用し、複数の種類のお茶で共有しないというのが常識として捉えられております。彼らが懸念しているのは、「1つの急須で複数の種類のお茶をいれると、急須に様々な香りが染みこみ、それによって、お茶が美味しくはいらなくなる」という点です。或いは、1つの急須を1種類のお茶に対して使い続けることで、「お茶の香りが染みこみ、湯を通しただけでお茶の香りが漂ってくるまでに急須が成長する」と考える人もおります。しかしながら、無機化合物である急須に、有機化合物であるお茶の成分が染みこんでも化学的に結合するわけではありません。熱湯を通せば、香り成分は容易に洗い流せるし、奥に入り込んだ成分も、暫くすれば酸化分解されます。この事から、「お茶の香りが陶器に染みこむことで急須が成長する」という考え方は適切ではありません。

同じ種類のお茶でも茶園が変われば含まれるミネラルは同じではない

急須を複数のお茶に対して使用するべきではないという考え方は、本来、お茶由来のミネラルが急須に付着することに関係しております。お茶は土地の土壌由来、お茶の品種由来のミネラルを含有しており、お茶をいれるとそれらのミネラルが急須内面に付着します。同じお茶をいれ続けていると、同質のミネラルが急須内面に蓄積する事で、お茶の味がより円やかになります。このような理由から、お茶が非常に好きな人は、日本茶用専用の急須、台湾茶専用の急須、ダージリン紅茶専用の急須といった具合に、急須を特定のお茶に対して専用化したいと考える傾向があります。しかしながら、この考え方には1つ問題があります。台湾茶といっても、異なる山で収穫されたお茶は、異なる種類のミネラルを含みます。同じ凍頂山で作られていたとしても、茶園が変われば、土壌の質も変わり、含まれているミネラルの種類も異なります。仮に特定の生産者のみからお茶を購入していたとしても、生産者が所有する茶園は1つではありません。異なる茶園には異なる土壌で構成されており、お茶に含まれるミネラルは同一ではありません。どうしても、急須を専用化したい場合は、産地やお茶の種類毎ではなく、品種毎に分けることをお勧めします。ただし、プーアル茶や実生在来のような種から撒かれたお茶は全てのお茶の木の形質が異なるため、品種毎に分けることができません。

お茶によっては特定の急須と相性が悪い素材も

前述したとおり、お茶は産地や品種毎に異なる種類のミネラルを含みます。この結果、お茶によっては、特定の急須と相性が悪い場合があります。例えば、安渓の烏龍茶、鳳凰単叢烏龍茶、武夷烏龍茶は萬古焼とは相性が合いません。私が販売しているラインアップの中では、信楽粗土の急須もこれらの産地のお茶とは相性が合いません。萬古焼でこれらのお茶をいれた場合、余韻(後味、コク)が無くなり、同時に渋味を呈します。相性の悪いお茶をいれ続けると、急須の内面に相性の良くないお茶由来のミネラルが付着するため、結果、急須の性能が低下し、他のお茶をいれても同じように余韻のない味になってしまいます。急須の材質により、全てのお茶と相性が良い土と、特定のお茶とは相性が悪い土とあるため注意が必要です。HOJOで販売している、伊賀天然朱泥、古琵琶湖土、佐渡の急須に関しては、これら3種のお茶とも高い相性を示します。これら3産地のお茶は含まれるミネラルがやや特殊でであるため、急須を専用化するのも一案かと思います。

安渓、鳳凰山、武夷山のお茶と相性が良くない萬古焼

大事なのは同じ水を使い続けること

急須は暫く使い込むことで、お茶の味が更に濃く、甘く感じられるようになります。実際、1ヶ月も使うと、新品の時と比べ、明らかに優れた味へと変化します。多くの人は、お茶が急須に馴染んだ結果と考えがちです。しかしながら、実は、お茶以上に多大な影響を与えているのは、「水」です。水に含まれるミネラルが重要な役割を果たしております。同一の水を使用し続けていると、水由来のミネラルが急須内面に付着し、その結果、急須と相乗効果を示します。私はこの事を実験するために、店に、新しくおろした急須をおき、店のスタッフにお願いし、1ヶ月間毎日、「湯を注ぎ入れては、捨てる」という動作を繰り返しました。1ヶ月後に同一素材、同一バッチバッチの新品の急須と味を比べたところ、顕著に差が観察されました。水をいれ続けたお茶の方が、余韻が長く、渋味が殆ど感じられなくなっておりました。しかし、注意すべき点としては、毎回必ず同じ水、同じ湯沸かしを使用することです。お茶をいれる水は勿論、急須を洗う水も統一する必要があります。水を変えると、急須内面に付着したミネラルと、新しい水に含まれる水由来のミネラル間での緩衝作用により、味にまとまりが無くなります。湯沸かしからもミネラルが溶出することから、毎回同じ湯沸かしを使用することが重要です。

村田益規作の伊賀天然朱泥急須、宝瓶、絞り出し他入荷

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村田益規氏作の伊賀天然朱泥の茶器が入荷しました。今回入荷したのは横手の急須、後手の急須(茶壺)、絞り出し、宝瓶、茶海です。この土は私が土探しをし、仲介する土会社から全量購入した後、委託で精製した土を急須作家へと送付し、急須の製作を依頼しております。

http://www.hojotea.com/item/yoshiki_iga.htm

香りを豊にする伊賀天然朱泥

伊賀の土はお茶の香りと味の広がりを強め、同時に余韻も増します。広がりは専門用語でボディと表現し、中国語では口感という言葉で表現されます。口に含んだときに香りや味がふんわりとふくよかに広がり、非常に豊に感じられると同時に、唾液腺を刺激するような感覚を指します。このような特性ゆえに、紅茶や烏龍茶のような発酵茶をいれると香りが非常に華やかに感じられ、ダージリンティとも相性が良い土です。また、緑茶やプーアル茶などとも相性が良く、お茶が華やかに感じられます。特に近年の日本茶の多くは製茶工程で茎を除去していることから、一般に味わいが細く感じられます。その点、伊賀天然朱泥で日本茶を淹れると非常に華やかな味わいへと変化します。

育てる面白さがある土

伊賀天然朱泥は非常に多孔質で天然の粗土と言うこともあり、お茶が仄かに染み出すというユニークな特徴を有します。暫く使い込むと徐々に目詰まりし、染み出しは無くなります。また、暫く使い込むことで味も更に滑らかになります。ある意味、急須を育てると言う感覚がとても感じられる茶器です。

絞り出し

絞り出しは、100mlくらいの容積で、底の深いタイプを製作依頼したのですが、作家の強い熱望からか、意図せず、フラットなタイプの絞り出しが製作されました。工夫式の淹れ方には使用できませんが、玉露や手揉み煎茶などを低い温度でじっくりいれる方法に適した形状です。

宝瓶

今回村田益規氏に初めて宝瓶の製作依頼を出したのですが、納品されたデザインは可愛らしく、興味深い作風でした。今後も宝瓶の製作数を増やしていこうと思っております。

意外!チョコレートと相性が良いプーアル熟茶

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お茶請けを上手に選ぶとお茶を飲む楽しみがより増します。お茶に合わせてお茶請けを選ぶのであれば比較的簡単なのですが、現実は、お茶請けの方が主役で、それにあわせてお茶を選ぶことの方が多いのではないでしょうか?油をあまり使用していない点で和菓子は比較的お茶とあわせやすいのですが、非常に難しいのがチョコレートやチョコレートを使用した洋菓子です。そこで、あわせるのが最も難しいチョコレートと相性が良いお茶を紹介したいと思います。

チョコレートは油脂を含むため普通のお茶では圧倒されてしまう

チョコレートは油脂を多く含むため、一般的なお茶では味の点で完全に圧倒されてしまいます。紅茶はケーキとの相性が抜群に良いお茶ですが、同理由からチョコレートケーキとの相性は余り良くありません。チョコレートケーキが濃厚すぎるため、紅茶では押し切られてしまう感があります。また、緑茶とチョコレートとも相性が良くありません。含まれる成分が水溶性の緑茶に対して、成分が脂溶性のチョコレートの場合、物理化学的にも相反する性格であり、お互いに口の中で馴染みません。

チョコレートと相性が良いのはプーアル熟茶

私の経験上、チョコレート及び、チョコレートケーキとのとても相性がよいお茶はプーアル熟茶です。プーアル熟茶は微生物による発酵で作られたお茶であり、成分が長い時間をかけて発酵(酸化)されているために、疎水性の成分を多く含みます。チョコレートも成分が脂溶性(疎水性)ということもあり、プーアル熟茶とチョコレートは成分間の相性が良く、お勧めです。ただし、プーアル熟茶でも適切な加工方法で作られいる事が前提です。上手に作られたプーアル熟茶は乾燥フルーツのような甘い香りがするのに対し、不適切な発酵で作られたプーアル茶は土や乾燥キノコのような臭いを呈し、お勧めしません。

熟茶はミルクティにしても美味しいお茶

熟茶はミルクとの相性も良いお茶です。ミルクというと、紅茶+ミルクが一般的ですが、プーアル熟茶は意外にミルクとの相性が良く、ミルクティーにしてチョコレートとあわせるのもお勧めです。

プーアル茶ラテほか意外に美味しいお茶とミルクの組み合わせ

他のお茶とブレンドをすることでオリジナルのお茶を楽しむ

プーアル茶は単独で淹れるのも良いですが、プーアル熟茶に少しアレンジを加えることで、更に香りの幅が広がります。
例えば、プーアル熟茶と紅茶を半々でお茶をいれると、紅茶の華やかさと、熟茶のどっしりとした味わいの相乗効果で、非常に飲みごたえのあるお茶になります。
茶葉は混ぜる必要なく、それぞれの茶葉を半量づつ急須にいれるだけでOKです。

プーアル熟茶と烏龍茶も相性の良い組み合わせです。
例えば、黒鉄観音とプーアル熟茶を半々にブレンドすると、香りは黒鉄観音ですが、味わいはプール熟茶のような、とても面白いお茶になります。

熟茶とブレンドをしたお茶は、華やかな香りに加え、熟茶の味わいがしっかりとあるため、香りの種類に関係無く、チョコレート系や油脂を多く使用した洋菓子と高い相性を示します。ダージリンティとプーアル熟茶、鳳凰単叢烏龍とプーアル熟茶、ローズとプーアル茶等、相性の良い組み合わせは多数有ります。色々な組み合わせを試されると、お茶の楽しみの幅が広がります。


台湾三希の牙白の磁器新商品が各種入荷

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台湾の三希製の磁器に複数の新商品を発売しました。また、これまで品切れとなっておりました、牙白蓋碗小 無地と茶海も入荷しました。今回入荷した商品の多くは牙白の無地シリーズです。シンプルな無地の茶器は伝統・モダン何れのインテリアとも合わせやすくお勧めです。

http://www.hojotea.com/item/taiwan_teaware.htm

取っ手のないタイプの茶海を新たに仕入れました。

味が良く普段使いにお勧め

中国台湾と多くの磁器メーカーがあります。デザイン的にもオシャレなものが多く、茶器専門店へ行くと、とても魅力的に映ります。磁器は味に関してニュートラルと思われておりますが、実はそうではありません。ガラスでも溶出試験をすると、金属イオンが検出されるのと同様に、磁器も溶出試験をすると金属イオンが水に溶出し、それが味に影響をします。私が自分用に使用する場合、味を良くするか、良くしなくとも少なくとも悪くしない素材を選ぶのですが、意外に、多くの磁器が余韻をカットしてしまったり、渋味を呈することが多く、素材と味との関係にこだわり出すと、選択が非常に難しいのが現実です。こだわり抜いた場合、景徳鎮の磁器などが選択肢になると思いますが、景徳鎮の磁器の場合、本物と呼べる品質は非常に値段がしますので、私は「別格」と考えております。私が三希をお勧めする理由は、値段的に手頃で、普段気軽に使え、最も重要な点として、味がとても良い点です。三希を選ぶ前に、様々な磁器を入手し、味の評価をしました。三希に関しても三希の商品の全てがお勧めなわけではなく、三希の牙白釉でも釉薬によっては味に問題のあるモデルもありました。HOJOで選んでいる三希の牙白シリーズでお茶を飲むと、味がふくよかなのと同時に、余韻も高め、また、舌触りが滑らかです。茶器はやや厚めに作られており壊れにくい点も日常頻繁に使う茶器という点ではメリットではないかと思います。また、三希の牙白シリーズの磁器は、あらゆる素材の急須との相性が良いため、陶器のとの組み合わせにも悩む必要がありません。

新しく3つの茶壺(後手急須)を追加しました。

三希の磁器に限ったことではありませんが、おろしたては多少味にざらつきがある場合があります。また、陶器や磁器の場合、個体差もあり、味に関しては多少のバラツキがあります。暫く使い込むことで、水由来のカルシウムや鉄分が内面に付着し。味がより円やかで滑らかに変化します。

高級茶のような味と香りを引き出す魔法のようなブレンド

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お茶を正しくブレンドをする事で、単一のお茶では味わえないような素晴らしい香りと品質のお茶を作り上げることができます。本コラムでは、高い品質のお茶をブレンドで創り出すための手軽な方法を紹介したいと思います。

ブレンドすることでお茶の質を高める方法

ブレンドには幾つかの目的がありますが、今回は、「原料の質が高いお茶」と「香りに特徴があるお茶」をブレンドすることで、お茶のベースとなる品質を劇的に引き上げ、コクのある味と上品な香りのお茶を生み出す方法を紹介したいと思います。このブレンドをする上での重要なポイントは、香りを担うお茶と、質を担うお茶をそれぞれ明確に切り分け、それぞれに異なる役割分担が有ることを意識することが大事です。

お茶に含まれる成分の酸化度が類似していることが大切

注意点として、ブレンドする2つのお茶に含まれる成分の酸化度、つまり、水との親和性が同レベルである事が大事です。お茶の成分の酸化度はそれぞれのお茶の製造方法やその後の熟成によってきまります。大まかに分けると、緑茶やプーアル生茶のようにお茶に含まれるポリフェノールが殆ど酸化されていない不発酵茶、烏龍茶、ダージリン、白茶のように、適度に酸化が進んでいる半発酵茶、中国紅茶、火が強く入った烏龍茶、プーアル熟茶の様に成分がしっかりと酸化している重発酵茶に分類されます。成分の酸化度が上がるにつれて、お茶に含まれる成分は水溶性から非不溶性(疎水性)へと変化します。2つのお茶をブレンドする際は、水溶性系のお茶同士を混ぜるか、或いは、非水溶性の成分を含むお茶同士をブレンドするか、明確に意識する必要があります。例えば、成分が非水溶性のプーアル熟茶と、水溶性成分が多く含まれる台湾の高山茶をブレンドしても、統一感が無く、お互いのお茶の香り味に融和が感じられません、両お茶に含まれる成分の化学的な特性が違い過ぎて、ブレンドしても相反してしまうのです。

香りの個性が弱くミネラルが豊富なプーアル茶はブレンドに最適

質を高める為のお茶ですが、私が強くお勧めするのはプーアル茶です。プーアル茶は新茶になるほど、香りが穏やかで、個性が強くありません。この特徴こそが、ブレンドに適しており、ブレンド相手の香りを引き立てます。ただし、どのプーアル茶でも良いわけではなく、自然栽培のお茶から作られたお茶である必要があります。雲南省の場合、知名度の高い産地になるほど値段が高く、その為に、農家は量産に走り、肥料が多く使われ、お茶の質は低下します。その為、肥料を全く使わないような自然栽培茶でも、産地に精通していれば、意外に現実的な値段で入手出来ます。自然栽培のプーアル茶をブレンドに用いると、香りと味の両方が満たされ、非常に素晴らしいお茶になります。

具体的なお茶の組み合わせ

ブレンドのお勧めの組み合わせは以下をご参考にしてください。

プーアル生茶 + ダージリンファーストフラッシュ
プーアル生茶 + 台湾の烏龍茶
プーアル生茶 + 鳳凰単叢烏龍茶

プーアル熟茶 + 中国や台湾の紅茶
プーアル熟茶 + 火が強く入った烏龍茶

ブレンドは最初は半々をお勧めします。茶葉同士は混ぜる必要は無く、等量ずつ急須へいれ、何時も通りにいれればOKです。
プーアル生茶とダージリンファーストフラッシュの組み合わせは非常に鮮烈で、今まで味わったこともないように味が軟らかく、香りの余韻が長くつづきます。大げさではなく、人生で味わったことのないレベルの香りのダージリンを味わうことができます。


プーアル生茶と凍頂烏龍を合わせるのも非常にお勧めです。この組み合わせは、梨山茶をはるかに超越したやわらかな後味と気品のある長い余韻がします。初めて飲んだときはその凄さに感動しました。半々でブレンドした場合、香りは完全に烏龍茶であり、プーアル生茶の香りは全く感じられません。


鳳凰単叢とプーアル茶の組み合わせは新鮮な驚きを与えてくれます。例えば、鳳凰烏崠蜜蘭香単叢とプーアル生茶をブレンドした場合、香り味の質が両方とも向上し、10gが1万円するような高級な「単株茶」に匹敵するような、上品な香りと、滑らかで軟らかく、驚異的に深い後味が味わえます。

ブレンドに向いているプーアル茶

プーアル生茶でブレンドに適しているのは以下のお茶です。コストパフォ−マンスが高くバランスが良いのは東山生茶 2017年です。また、私が特にお勧めするお茶は耿馬古樹生茶 2017です。このお茶は余韻もボディも強く、極めて質の高い茶葉から作られております。

東山生茶 2017
白鶯山古樹生茶 2017
岩鳴山古樹生茶 2016
老黒塞古樹生茶 2016
茶耿馬古樹生茶 2017

熟茶をブレンドに使う場合、以下のお茶がお勧めです。

无量山古樹熟茶
薄刀山古樹熟茶 2016
果敢古樹熟茶 2016
火草山古樹熟茶 2017 (もうすぐ発売予定。)

とろとろの味わい!火草山古樹熟茶2017を発売

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中国で野放茶と呼ばれる、自然のままに放置され、人の手が全く入ってない、野生状態のお茶からプーアル熟茶を作りました。非常に滑らかで、余韻が長く、とろりとした、とろけるようなやわらからい味わいのお茶です。

放置状態の自然栽培茶から作られたプーアル熟茶

火草山は雲南省臨滄市の南西部、ミャンマーの果敢地区と国境を接する鎮康県に位置する山です。火草山の隣には、臨滄における銘茶の産地である馬鞍山があります。
火草山のお茶は2017年の春に、長く萎凋を行った特注のプーアル生茶を作り、先行予約にて紹介しております。火草山古樹熟茶についても、同じ地域の原料から作られております。
火草山古樹熟茶は、長期に渡って自然に放置され、野生化した、お茶の木(中国語における野放茶)を原料に作られており、熟茶でありながら、驚くべきレベルの透明感と深いコクを有するお茶です。また、このお茶は飲んだときに、甘く、とろけるような味がします。製法が特別なわけではなく、お茶に鉄分が多く含まれているためにこのような独特の味わいがします。

一見藪のように見えますが、中国で野放茶と呼ばれる自然栽培の茶園です。

入手がとても難しい春の一番茶

中国国内での消費割合が非常に高いプーアル生茶に対して、プーアル熟茶の場合、一般的に、その多くが輸出や中国の東北部の寒い地域に販売されます。遠隔地が市場と言うこともあり、比較的安価であることが重要視されます。この為、生産される熟茶の殆どは、春、夏、秋茶をブレンドすることで、値段と品質を均して販売されます。実際、雲南省の省都である昆明のお茶問屋などでプーアル熟茶を求めた場合、春茶100%のお茶を見るけることは極めて希で、その殆どがブレンドされたお茶になります。それに対して、HOJOで販売しているプーアル熟茶はどれも春茶のみです。私は確実に春茶を仕入れるために、現地で発酵作業をやっている「生産者」から直接仕入れております。ただし、春茶を仕入れるためには、多くの場合生産者に対し予約注文をいれておく必要があります。知識のあるお茶業者は私達と同じく春茶を狙っているため、予約なしでは入手が非常に難しいのが実情です。

作りたての火草山産のプーアル生茶

質が高く高級なプーアル熟茶が少ない理由

同じグレードの茶葉からプーアル生茶とプーアル熟茶に加工した場合、プーアル生茶の方が高い値段がつきます。プーアル熟茶はプーアル生茶を原料として作られており、生産するためには多くの手間がかかっております。より手間がかかっているプーアル熟茶の方が生茶よりも安いと言うのは生産者からすると受け入れがたい話です。ただし、原料として用いられる茶葉の質が下がると、生茶と熟茶の値段は僅差になります。安価な熟茶は海外や中国の寒い地域での需要が非常に高く、プーアル生茶よりもまとまった量(トン単位で)売れるため、生産者からすると非常に魅力有る商売となります。このような理由から、雲南省において、質の高いプーアル熟茶が作られるのは非常に希です。良い品質のプーアル熟茶を見つけるのは、プーアル生茶で同等の品質を見つける以上に経験と労力を伴います。

特注により高品質なプーアル生茶を原料に熟茶を生産

HOJOではこれまでも様々なプーアル熟茶を紹介してきました。火草山古樹熟茶が特別なのは、非常に質の高いプーアル生茶を原料としている点です。実際、今回使用した原料のプーアル生茶はそのまま販売しても、十分に通用する品質だと思います。実は数年前から、極めて質の高い自然栽培茶を原料に用い、プーアル熟茶を作りたいと願っておりました。過去数年にわたり、高品質のプーアル生茶を専門とする生産者に、質の高い熟茶の生産をお願いしておりました。非常に原料コストが高く、また、稀少ゆえに、なかなか生産することに同意して貰えなかったのですが、昨年ようやくその願いが通じました。生産者が少量でも上手に発酵を制御する方法を見いだしたことで、一般的なプーアル熟茶の様に10トン規模で大量に作るのではなく、1トン程度の少量の単位で発酵作業をすることが可能になりました。一部は、生産者が地元のお客さんに販売し、残りを私が仕入れました。生産者談によると、高品質なプーアル熟茶は値段がゆえに一般にプーアル熟茶を求めるお客さんからの需要は殆ど無いそうです。

適切に発酵されたお茶は甘い乾燥フルーツの香り

プーアル熟茶は微生物の発酵によって作られますが、重要なポイントは水分と酸素供給です。水分が多すぎると、茶葉内部の酸素が不足し、嫌気性菌と呼ばれる微生物が増殖し、その結果不快な臭いを作り、健康面でも好ましくありません。プーアル熟茶が嫌いという人が口をそろえて言うような、カビ臭い、古い家具や土のような臭いは酸素不足により嫌気性菌が増殖した結果によるものです。また、水分が少なすぎると、微生物は増殖が困難になり発酵が進みません。適度な水分を与えつつ、頻繁に茶葉を攪拌することで、空気を与えると、放線菌を中心とする好気性菌(酸素を好む微生物)が増殖します。また、その結果、茶葉の温度が非常に高温になるため、雑菌が増殖できずません。適切に発酵が行われたお茶は、乾燥フルーツのような甘い香りがします。火草山は良い原料を用いたこと、また、少量で生産したこともあり、非常に手をかけ、頻繁に攪拌をしました。その結果、私が理想とする非常に甘い香りのお茶に仕上がり非常に満足の行く内容でした。とろりとした味わいと、乾燥棗のような甘い香りをお楽しみください。

現地発!2018年の雲南省のお茶の状況

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3月31日より雲南省へ来ております。数日こちらに滞在し茶園や生産者を訪問したことで、今年の雲南省におけるお茶の詳細情報を入手しましたのでレポートしたいと思います。

標高は高品質のお茶の必須条件

私が現在いる場所は、臨滄の南西部の鎮康県周辺です。日本から出発した場合、早くて2日、不慣れな人だと3日は移動にかかる場所です。この周辺は2000m級の茶山が数時間内の距離に豊富にあります。無肥料無農薬の老木からなる茶園が多く残っており、良質な原料の宝庫と言える場所です。

お茶の収穫時期は年ごとに変化

通常、お茶の収穫時期は年ごとにぶれます。農作物は陰暦に準じて成長すると言われているため、私達が使っている陽暦のカレンダー毎年ブレが生じるのはごく自然と言えます。また、中華正月以降の、雨の量がお茶の成長に大きく影響することから、毎年新茶の収穫時期は同じではありません。

比較的低地のよく手入れされたお茶の木(自然栽培ではないお茶の木)

昨年は中華正月〜4月まで殆ど雨が降らず、加えて、低温が続いておりました。4月上旬に入りようやくお茶が成長を始めたのですが、4月の中旬〜5月の末まで雨が降り続いたことで、生産量が極めて少なく、その結果、多くの加工業者に関し新茶の生産量は例年の1/3程度でした。今年も中華正月以降殆ど雨が降っておりませんが、気温は高めに推移しております。この為、お茶の成長は昨年と同じく遅れているものの、収量は昨年よりも多くなると予想されております。ただ、値段に関しては、今年も少なからず昨年の影響を大いに受けており、昨年の分も取り返そうとする生産者の思惑が価格に反映しており、どの産地を見てもお茶の販売価格が20%ほど上昇気味です。但し、実際に茶園をまわり生茶の取引価格を調査すると、昨年とほぼ同じかやや高い程度であり、恐らく、よりシーズンが進むことで例年並みの値段に落ち着くと思われます。但し、野生茶に関しては値段がじわじわと上昇しております。野生の紅茶の需要が増加し、原料の取り合いとなっている事が影響しております。

若いお茶の木は成長が早いのが特徴です。

良いお茶ほど後に出てきます

臨滄地域では既にプーアル茶の生産が始まっております。中国では、緑茶に関し、清明節の前に収穫されたお茶を「明前茶」と呼び珍重する傾向があります。この慣習ゆえに、プーアル茶にも同様の概念を当てはめる人がおります。また、「お茶の品質は早い程良い」と考えている業者も少数ですが存在し、早摘みのお茶は比較的高い値段が付きます。但し、早摘み=低い標高&若い木&肥料栽培です。現在摘まれているお茶は1300m〜1600m程度の標高の比較的若い木からなる茶園産で、正直あまりよい品質ではありません。私が予約している2000-2400mクラスの茶園産のお茶の収穫は、あと2週間か3週間先になりそうです。

シーズン前に産地入りすることで生産条件を打ち合わせ

私の場合、雲南省で仕入れているお茶の殆どを特注で作っております。原料及び、生産のパラメーターを全て指定し、生産予約をすることで欲しいお茶を腕のよい茶師に確実に仕上げて貰っております。但し、お茶のシーズンが始まる前に入念に打ち合わせをする必要があり、それゆえに、シーズン前に現地入りをしております。特に雲南省の人は、実際に顔を見ると、ようやくエンジンがかかる傾向があり、シーズン前に産地に来るのはとても重要です。

大雪山野生白茶の萎凋工程:今年は非常に理想的な商品が出来そうで嬉しいです。

また、銀針のような単芽からなる白茶や、野生茶の生産は今が生産のピークを迎えており、ここ数日は、特注で作ったお茶の品質確認作業に追われておりました。

大雪山野生プーアル茶は必要量を作り上げ、既に仕入れを完了しました。理想的な仕上がりに満足しております。

今年の課題は生産→緊圧→出荷の時間短縮により鮮度を維持すること

今年はお茶の生産から緊圧までの時間を短縮することで、新鮮なお茶の香りを最大限に保ちつつ日本に届けたいと思っており、その為に、生産後1週間以内に緊圧を行い、現地で立ち会い、餅茶の品質を再確認した上で、即出荷してしまおうと考えております。

ゴールデンチップを多く含む紅茶は本当に美味しい?

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紅茶に含まれる金色の芽のことをゴールデンチップと呼びます。「ゴールデンチップが多いから稀少」、「ゴールデンチップが多いから質が良い」という話しを聞いたことがあると思いますが、果たしてそれは本当でしょうか?ゴールデンチップについてのノウハウを少し掘り下げて説明したいと思います。

ゴールデンチップは芽に付着したテアフラビンの色

ゴールデンチップはお茶の芽の部分です。お茶の芽は白い産毛に覆われております。紅茶の場合、お茶を揉んだ際に、この白い産毛にお茶の液が付着し、それが発酵することで黄(金)色に変色します。紅茶の発酵は茶葉に含まれる酵素が媒介することで、お茶のポリフェノールが酸化され、テアフラビンと言う黄色の物質に変化します。紅茶の色は一見赤や茶色に見えますが、テアフラビンは黄色の色素です。黄色は濃縮すると紅茶の様な濃い色になります。
但し、製茶に失敗した紅茶は茶色をしております。テアフラビンが更に酸化してテアルビジンと呼ばれるタンニンが形成されるためです。

お茶の芽は強く揉まずに白茶や緑茶に加工すると上の写真の様に白い産毛に覆われたお茶に仕上がります。

ゴールデンチップの割合は茶摘み規準と収穫シーズンが影響

ゴールデンチップの割合はお茶の摘み方とお茶摘みのシーズンで決まります。

紅茶の摘み方は色々あり、単芽、1芯1葉、1芯2葉, 1芯3-4葉と様々です。

全体に占める芽の比率が高いほど、紅茶に加工した際、金色のゴールデンチップが多く見えます。例えば、芽のみを収穫する単芽の場合、茶葉全体が金色に見えます。逆に葉の比率が増えると、黒い色の比率が増えます。

1芯1葉の生茶(上)、下は上の原料から作られた紅茶(雲南古樹紅茶)

 

同じ茶園産の場合ゴールデンチップが多いほど値段は高い

海外産の紅茶の殆どは手で摘まれるため、お茶の値段はお茶摘みの効率で決まります。単芽は非常に小さく1日摘んでも500g程度しか集められません。(500gを製茶したら水分が減少することで1/4になります。)逆に葉の比率が多いほど、お茶摘み効率は上がるため、生茶原料の価格は安くなります。つまり、同じ産地の同じ生産者によって作られたお茶の場合、ゴールデンチップが多いほど値段が高くなります。但し、お茶の価値は茶摘み規準だけでは決まりません。例えば、低地で肥料栽培されたようなお茶の場合、仮にゴールデンチップが多く含まれていても比較的安価になります。逆に、標高の高い茶園の良質な原料になると、ゴールデンチップが殆ど含まれて無くても高い値段が付きます。ゴールデンチップが多い方が高いという法則はあくまで同じ条件のお茶を比較した場合です。

単芽の茶葉原料(上)とそれから作られた紅茶(金芽)

ゴールデンチップが多いほど品質が良いとは限らない

ゴールデンチップが多く含まれるお茶は値段が高いという話しをしましたが、ゴールデンチップが多いほど品質が良いとは一概に言えません。ゴールデンチップ(芽)にはアミノ酸が多く含まれ、味が滑らかに感じられます。逆に香りに寄与するポリフェノールは葉に多く含まれます。烏龍茶などのような香りを求めるお茶が1芯3-4葉で摘まれるのはこの為です。つまり、同じ茶園で摘まれた1番茶を比較した場合、ゴールデンチップの多いお茶ほど口に含んだときにお茶が滑らかで優しく感じられ、逆にゴールデンチップの割合が低いお茶の方が強い香りがします。私の経験上、ゴールデンチップが多いほどミルクティに向くように思います。その点、単芽から作られた金芽紅茶や1芯1葉のお茶はミルクとの相性がよいです。香りもあり、滑らかさも欲しい場合、1芯2葉が両方を満たします。紅茶の場合、1芯2葉の茶摘み規準が一般的なのはその為です。

1芯2葉の茶葉(上)と紅茶(下)

ゴールデンチップが多い方が質が良い例外

尚、1つ例外があります。海外のお茶の場合、春に1度摘まれるだけではなく、有名産地になると年間10回くらい摘まれます。春や秋の終わりの寒い時期はお茶の成長が遅く、同じ1芯2葉でも、葉が小さく、茎が短くなり、結果的に芽の比率が高くなるのに対し、夏に近づくにつれて、温度が上がり、雨が豊富になるため、お茶は勢いよく成長し、芽の比率が小さくなります。この場合、同じように1芯2葉で摘まれたお茶でも、春の一番茶が最もゴールデンチップの割合が高く、遅摘みになるほどにゴールデンチップの割合が少なくなります。例えば春の1番茶の方が2番茶よりも顕著にゴールデンチップを多く含んでおります。このようにお茶摘みのタイミングの違いによって生じるゴールデンチップの量の差に関しては、品質に影響します。

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