暫く品切れになっておりました本山蛇塚煎茶が入荷しました。今年は雨が少なく、収穫時期が特に遅くなったこともあり、後味の甘いお茶に仕上がったと感じております。
6月の下旬に初摘みを迎える山のお茶
蛇塚煎茶は静岡市葵区の標高800mの地点にある茶園で収穫されます。標高が高い上に、谷底にある藁科川支流から吹き上がる冷気のおかげでお茶の成長が非常に遅く、今年は蛇塚煎茶が収穫されたのは6月の下旬でした。台湾でも中国でも標高の高い地点に位置する茶園は優れた品質のお茶を生み出すことから他のお茶よりも高値で取引されます。日本の場合、茶園の標高は意外に意識されておりませんが、標高の高い地点で収穫されたお茶には特徴的なフローラルな香りと透明感があります。高原野菜、標高の高い地点で作られた果物が美味しいのと同じ原理です。本山蛇塚煎茶の場合、より香りを高める為に製茶に萎凋が取り入れられているのも特徴です。
玉露の需要増大により稀少になりつつ有る蛇塚煎茶
蛇塚煎茶は低肥料、日本の農薬基準に準じて栽培されているものの、HOJOの煎茶ラインアップの中では唯一自然栽培茶ではありません。ただ、極めて高い茶園の標高と生産者の中村氏による萎凋を取り入れた独特の製法がゆえに、印象的な味香りが感じられ、長年に渡りHOJOの煎茶ラインアップの1つとして紹介しております。近年玉露の需要の高まりに伴い、蛇塚のお茶の多くが玉露に加工されるようになり、煎茶として入手出来る量が限られるようになって来ました。
昔ながらの茶柱が立つお茶
本山蛇塚煎茶の良質な素材そのものの味香りを感じて頂くため、また、生産者が非常に上手に製茶をしているため、火入れを行わず、異物のみ除去した状態で商品化することにしました。また、お茶をより美味しく飲んで頂くために茎は除去しておりません。茎の有無はお茶に大きく影響します。煎茶にかかわらず、どのお茶に関しても言えることですが、茎が入ることで、ふんわりとした膨らみのある味わいになります。逆に茎を除去してしまったお茶は香りや味に広がりが感じられません。茎の存在は非常に重要であり、茎が入らないお茶は、むき身の貝だけから作られた味噌汁のように口に含んだときのふんわり感が減少します。昔の煎茶には茎が入っていたため「茶柱が立つと縁起が良い」と言ったものですが、いつからか、濃い緑色単一色のお茶の外観がお茶業界でもてはやされるようになり、最近の日本茶は仕上げの際に茎は除去されるようになり、茶柱が立たないお茶が大多数です。