日本茶を従来のように強く揉むのではなく、極めて軽く揉むことで、何煎にも渡って楽しめるお茶の開発を行っております。同時に、加工中にお茶に加えられる熱エネルギーを極力減らすことで、お茶の素材が持つ花のような香りを最大限に引き出したいと思っております。
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様々な揉み方のサンプルを実際の設備を通じて作成
このコンセプトを思いついたのは昨年の春でした。また、2番茶のシーズン前であったため、奈良県月ヶ瀬の自然栽培茶の生産者にお願いして様々な実験を行いました。
一般的に日本茶の加工は以下の様な流れになっております。
- 蒸気による殺青(蒸青)
- 粗揉
- 揉捻
- 中揉
- 精揉
- 乾燥
上記の工程のうち、粗揉、揉捻、中揉、精揉はどれもお茶を揉み・捻る工程です。日本茶の生産工場を訪問すると、大型設備が並んでいるのに驚きますが、実は多くの工程が「揉捻」に関係する設備で占められております。これら4つある揉捻工程ですが、基本的には、蒸しただけのお茶を、徐々に揉んでゆき、最終的には針のような形状に仕上げる事を目的としております。また、蒸青直後のお茶の葉は蒸気により湿っており、大量の水分を含んでいるため、揉捻をしつつ、乾燥も行います。
今回、蒸気による殺青直後、粗揉後、揉捻後、中揉後の4つのサンプルを抜き取り、それぞれを棚式の乾燥機にいれサンプルに仕上げました。
揉めば揉むほどに花の香りが減少する
実際にお茶を飲んでみて非常に驚いたのですが、花のような香りが一番強いのは何も揉んでないお茶でした。流石に蒸し工程直後のお茶は、水分が高すぎ、また、茶葉同士が付着するために、その後の乾燥を行う際の効率が悪く、乾燥中に熱ダメージを受けすぎている傾向が感じられました。この事から、製品化をするためには、粗揉工程以降と判断しました。
製品化のパラメーターがほぼ内定
粗揉後、揉捻後のサンプルをいれてみたところ、従来の日本茶で体験したことがないようなフローラルな香りがし、細胞がほとんど破壊されていないためか、透明感のある味わいが感じられました。ちょうど台湾の文山包種茶に香りと味わいが似ていると思いました。また、より揉捻工程を重ねるにつれ、日本茶特有の「炊きたてのご飯」のような独特の香りが形成されることが分かりました。つまり、お茶の場合、蒸し工程直後には花のような香りが香りがしているのですが、強く揉み、細胞を磨砕することで、花の香りが日本茶独特の炊きたてご飯のような香りへと置き換わっている事が分かりました。
私としては、花のような香りがする、スッキリとした味わいの日本茶を目指しているため、粗揉か揉捻工程からお茶を引き抜くことがベストと判断しました。また、揉み方についても、従来の揉み方よりも圧力を落とし、お茶の葉の細胞へのストレスを最小限に留めたいと思っております。
今年の1番茶の季節が来ましたら、特定の茶園をこのプロジェクト用に予約していただき、特注にて製品化を行いたいと計画しております。