鳳凰山や武夷山には樹齢が400年を超えるお茶の木があります。特に鳳凰山には樹齢900歳とも言われる茶樹も現存しております。しかし、お茶に関係する歴史書などによると中国で烏龍茶が普及したのは1600年代と記されております。烏龍茶が作られるようになる以前ですが、鳳凰山では緑茶が作られておりました。色々探索した結果、昔ながらの手法で作られている緑茶を仕入れることに成功しました。
鳳凰単叢烏龍茶や武夷烏龍茶が開発されたのは1600年代
「武夷茶歌」阮文锡(1627-1710) には既に武夷烏龍についての記述があり、また、 「茶说」 崇安县令王梓 (1706)の文中には「武夷烏龍は非常に人気があり、この技術を安渓の人々が模倣し生産しようとしている」という内容が記載されております。
様々な記録を調べると、明の時代武夷山では武夷松萝茶 と呼ばれる緑茶が普及しておりました。また、「潮中杂记」 郭子章 (1582年頃)によると潮州のお茶はそれほど高くなく、品質の良いお茶は鳳凰山で作られた鳳山茶との記載があります。この鳳山茶は別名:黄茶と呼ばれていたとも記録されております。当初、鳳山茶=黄茶?と戸惑ったのですが、知り合いを通じて広東省にある華南農業大学の研究者に確認をしたところ、鳳山茶が黄茶と呼ばれたのは、お茶の液の色が黄色かったためであり、種類的には緑茶に相当するとの回答が得られました。これらは基本釜炒り緑茶なのですが、現在の鳳凰単叢烏龍茶や武夷烏龍茶のように最後に焙煎工程がありました。武夷松萝茶と鳳凰の鳳山茶の共通点は、最後に焙煎工程を伴う点です。この技術は今日の鳳凰単叢烏龍茶や武夷烏龍茶と同じで、乾燥した水分を落とした段階ではまた、完成ではなく、最後に炭火で炭焙をすることで香りを高め、また、お茶を品質的に安定にします。
鳳凰単叢緑茶の特徴は最後の火入れ工程
現在、鳳凰山と言えば鳳凰単叢烏龍茶が有名ですが、実は、当時の明の時代の作り方を踏襲したお茶は今も細々と作られております。ただし、烏龍茶と異なり生産者が非常に限定されているため、私も今年初めて緑茶の生産者に出会いました。今回仕入れた鳳凰烏崠水仙単叢緑茶が鳳凰山における明代の緑茶になります。具体的な生産工程は以下の様になります。
- 茶摘みは4月の始めに行われ、1芯3-4葉でお茶が摘まれます。
- 室内萎凋
- 釜炒りによる殺青
- 揉捻
- 乾燥
- 炭焙(焙煎):80℃の低温でじっくりと焙ることで、香りを高めます。
最後に炭焙をするのは明代の緑茶の作り方の特徴であり、現在においても、この生産方法を踏襲する緑茶は中国各地に見られます。例えば、広西悟州の六堡茶なども同じような製造方法です。
玉露のような香りと非常に深い余韻
鳳凰烏崠水仙単叢緑茶は、見た目は鳳凰単叢烏龍そのものです。ただ、よく見ると、茶葉が緑茶のような濃い緑色をしております。いれかたとしては、一般的な中国緑茶のように、4g-5gを200mlで1分ほどいれても良いですし、本場の方法を踏襲するなら工夫式にて、2回洗茶をし茶葉の温度を十分に高めた後に、5gを100ml位の湯にて、数秒内でいれると方法も良いと思います。
香りは仄かに花の香りがします。私はマリーゴールドの香りに近いと思いました。また、見方によっては、玉露とそっくりの香りがします。知らずに飲んだら、少し萎凋をして作られた、質の良い玉露と思うかも知れません。烏崠山の標高1000m付近で収穫された茶葉を使用しており、余韻が極めて深く、味的には質の良いプーアル生茶のようです。